はじめに:肌の悩み、どこに相談すればいい?
肌のトラブルや悩みを抱えたとき、「皮膚科と美容皮膚科、どちらに行けばいいのだろう?」と迷う方は少なくありません。
同じ「皮膚」を扱うクリニックであっても、その目的やアプローチには大きな違いがあります。
このコラムでは、皮膚科と美容皮膚科の根本的な違いを分かりやすく解説し、患者様の肌悩みに合わせて最適なクリニックを選ぶための具体的なヒントを提供します。
この記事でわかること
・皮膚科と美容皮膚科の目的、診療内容、保険適用の違い。
・ニキビ、シミ、イボなど、具体的な症状ごとの最適な受診先。
・クリニック受診時に知っておきたい大切なポイント。
目的と診療内容:病気の治療 vs.美しさの追求
皮膚科と美容皮膚科の最も根本的な違いは、その「目的」にあります。
この目的の違いを明確に理解することで、その後の診療内容、治療方法、そして費用に関わる保険適用の違いが、患者様にとって論理的に理解しやすくなります。
皮膚科の目的と診療内容:病気の治療と健康な肌への回復
皮膚科は、皮膚、髪、爪など、全身の皮膚に生じる病気や疾患の診断と治療を専門としています。
その主な目的は、病気を治し、健康な状態に回復させること、そして症状によって日常生活に支障が出ないようにすることです。
例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、水虫、ヘルペス、帯状疱疹、やけど、重度のニキビなど、痛みやかゆみ、炎症といった症状を伴う皮膚トラブルが主な診療対象となります。
皮膚科は、これらの症状の原因を特定し、医学的な観点から適切な治療を提供することで、患者様の健康と生活の質の向上を目指します。
美容皮膚科の目的と診療内容:肌の美しさや若々しさの追求
一方、美容皮膚科は、病気の治療というよりも、肌をより美しく、若々しく保つことを主な目的としています。
シミ、そばかす、シワ、たるみ、ニキビ跡、毛穴の開きや黒ずみ、赤ら顔など、健康上の問題というよりは、審美的な改善を求める肌の悩みに対応します。
美容皮膚科は、メスを使わない施術が中心となる点が特徴であり、最新の医療技術や機器を用いて、患者様の「こうなりたい」という美の目標を達成するためのサポートを行います。
診療内容と治療方法:保険適用と自由診療の境界線
皮膚科と美容皮膚科の目的の違いは、提供される診療内容と治療方法、そして最も重要な費用負担の仕組みに直結します。
皮膚科の主な診療内容と治療(保険適用)
皮膚科では、主に内服薬や外用薬、漢方薬などを用いた治療が行われます。
治療は健康保険が適用される範囲内で行われ、病気の治癒を目指すことが中心です。
特定の疾患(例:太田母斑、扁平母斑、外傷性色素沈着など)に対しては、レーザー治療も保険適用となる場合がありますが、これはあくまで「病気」と診断された場合に限られます。
主な診療疾患例:
湿疹、かぶれ、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹
ニキビ(炎症が強く、病的な側面がある「尋常性ざ瘡」の場合)
水虫、たむし、ヘルペス、帯状疱疹
イボ(ウイルス性、尋常性疣贅など病的なもの)
美容皮膚科の主な診療内容と治療(自由診療)
美容皮膚科では、内服薬や外用薬、ビタミン剤に加え、レーザー治療(ピコレーザー、YAGレーザーなど)、ピーリング、注射(ボトックス、ヒアルロン酸)、美容点滴、ダーマペン、医療ハイフ(HIFU)など、多岐にわたる最先端の医療機器や薬剤を用いた治療が行われます。
これらの治療は、より美しさを追求する目的のため、基本的に健康保険適用外の「自由診療」となります 。
そのため、治療費は全額自己負担となり、高額になる場合があります。
主な診療内容例:
シミ、そばかす、肝斑(美容目的のもの)
ニキビ跡(クレーター、色素沈着など)の改善、根本的な肌質改善、繰り返すニキビの予防
シワ、たるみ、ほうれい線の改善
毛穴の開き、黒ずみ、赤ら顔(美容目的のもの)
医療脱毛、美肌・アンチエイジング全般
あなたの肌悩みに最適なのは?【症状別ガイド】
具体的な肌の症状ごとに、どちらのクリニックを受診すべきかを見ていきましょう。
・ニキビ・ニキビ跡
炎症や痛み、腫れが強いニキビはまず皮膚科へ。
ニキビ跡の改善や根本的な肌質改善、繰り返すニキビには美容皮膚科が適しています。
・シミ、そばかす、肝斑
病的なシミ(太田母斑、扁平母斑、外傷性色素沈着など)は皮膚科で保険適用のレーザー治療が可能です。
美容目的のシミ(老人性色素斑、そばかす、肝斑など)は美容皮膚科が適しています。
まずは皮膚科で診断を受け、病的なものか判断してもらいましょう。
・イボ
ウイルス性、または病的なイボは皮膚科で保険適用にて治療を受けられます 。
美容目的で取り除きたいイボは美容皮膚科が適しています(自由診療)。
・シワ、たるみ
加齢による肌の変化であり、主に美容皮膚科の領域となります。
・毛穴の開き、黒ずみ
美容的な悩みに分類されるため、美容皮膚科での相談が一般的です。
・肌荒れ、乾燥、赤み
炎症を伴う肌荒れは、まず皮膚科を受診し、原因を特定して適切な治療を受けることが重要です。
症状が落ち着いた後、肌質改善や再発予防、より美しい肌を目指す場合は、美容皮膚科も検討可能です。
ニキビや肌荒れのように、皮膚科と美容皮膚科のどちらでも対応可能な症状については、まずは皮膚科で診断・治療を受け、その後、美容目的のケアが必要であれば美容皮膚科を検討するという流れを理解することが重要です。
知っておきたい!
受診時の注意点とクリニック選びのポイント
適切なクリニックを選ぶためには、いくつかの重要なポイントがあります。
過去の治療歴の申告の重要性
他のクリニックで受けた治療(レーザー、光治療、ヒアルロン酸、ボトックス、美容整形手術など)や、体内に金属がある場合は、必ず医師に伝えましょう。
これは、副作用のリスクを避け、安全で効果的な治療計画を立てる上で非常に重要です。
カウンセリングの活用
どちらのクリニックを選べばいいか迷う場合や、自分の症状がどちらに該当するか分からない場合は、一人で悩まず、まずは皮膚科を受診し、医師に相談してみましょう。
美容皮膚科でも無料カウンセリングを行っているところが多く、治療内容や費用について詳しく聞くことができます。
まとめ:迷ったらまずは相談を
皮膚科は「病気の治療」、美容皮膚科は「美しさの追求」という異なる目的を持っています。
患者様ご自身の肌の症状や、どのような状態を目指したいのかによって、最適な受診先は異なります。
ニキビや肌荒れなど、炎症や痛みがある場合はまず皮膚科へ。
シミやシワ、ニキビ跡など、美容的な改善を目的とする場合は美容皮膚科の受診を検討しましょう。
しかし、中にはどちらのクリニックでも対応可能な症状や、判断に迷うケースもあります。
そのような時は、一人で悩まず、まずは専門医にご相談ください。菊川内科皮膚科クリニックでは、患者様一人ひとりの肌の状態を丁寧に診察し、最適な治療方針をご提案いたします。
皮膚のトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご来院ください。
~~監修 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一~~