便潜血について
便潜血検査は、便に目に見えないほどのわずかな血液(潜血)が混じっていないかを調べる検査です。主に大腸がん検診で用いられます。
便潜血検査の目的
便潜血検査の目的は、大腸がんや大腸ポリープなど、大腸からの出血を伴う病気の早期発見です。
1. 大腸がんの早期発見・早期治療
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大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、早期に発見して適切な治療を行えば、完治する可能性が高い病気です。
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便潜血検査は、目に見えないほどのわずかな出血でも検出できるため、早期の大腸がんを発見するのに有効です。
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早期発見により、内視鏡治療など、体への負担が少ない治療を選択できる可能性が高まります。
2. 大腸ポリープの発見
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大腸ポリープは、大腸がんの前段階となることがあります。
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便潜血検査でポリープからの出血を発見し、大腸内視鏡検査でポリープを切除することで、大腸がんの予防につながります。
3. 大腸からの出血を伴うその他の病気の発見
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便潜血検査は、大腸がんだけでなく、痔、大腸炎、大腸憩室など、大腸からの出血を伴う様々な病気の発見にも役立ちます。
便潜血検査の種類
便潜血検査には、大きく分けて以下の2つの種類があります。
1. 免疫化学的法
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ヒトの血液に特異的に反応する抗体を用いて、便中のヘモグロビンを検出します。
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食事制限の必要がなく、簡便で精度が高いことから、現在主流となっており、当院の検査もこちらを採用しています。
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ヒトの血液にのみ反応するため、他の動物の血液や食品に含まれる成分に影響されにくいという特徴があります。
2. 化学法
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グアヤックという試薬を用いて、便中のヘモグロビンを検出します。
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食事制限が必要で、精度も免疫化学的法に比べて劣ります。
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肉や野菜に含まれる成分にも反応してしまうため、検査前に食事制限が必要です。
その他
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検査方法の違いとは別に、便を採取する日数によって「1日法」と「2日法」があります。
●2日法の方が、1日法よりも大腸がんの発見率が高いとされています。
●現在では、2日法を採用している医療機関が多く、当院でも2日法を採用しています。
現在、日本国内で主流となっているのは、食事制限の必要がなく、精度の高い「免疫化学的法」です。
便潜血検査を受けるべき人
1. 40歳以上の方
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大腸がんのリスクは、40歳を過ぎると上昇します。
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厚生労働省は、40歳以上の方に年に1回の便潜血検査を推奨しています。
2. 大腸がんの家族歴がある方
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家族に大腸がんや大腸ポリープの既往歴がある方は、リスクが高まります。
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家族歴がある場合は、40歳未満でも医師に相談し、検査を検討しましょう。
3. 大腸ポリープの既往歴がある方
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過去に大腸ポリープを切除したことがある方は、再発のリスクがあります。
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医師の指示に従い、定期的な検査を受けましょう。
4. 炎症性腸疾患の方
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潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の方は、大腸がんのリスクが高まります。
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医師の指示に従い、定期的な検査を受けましょう。
5. 便通異常や腹痛などの症状がある方
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便秘と下痢の繰り返し、便が細くなる、血便、腹痛などの症状がある場合は、大腸の病気の可能性があります。
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便潜血検査の結果に関わらず、早めに受診しましょう。
6. その他
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食生活の乱れ(高脂肪、低食物繊維)
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喫煙、飲酒
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肥満
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大腸内視鏡検査を受けた事が無い方、または受ける事に抵抗がある方
これらのリスク要因に該当する方も、検査を検討しましょう。
検査について
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通常、2日間にわたって便を採取し、検査キットに提出します。
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採取方法は、検査キットに付属の説明書に従ってください。
検査結果の判定
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陽性:便に潜血が認められた場合
陰性:便に潜血が認められなかった場合
便潜血陽性の場合
便潜血検査で陽性となった場合、以下の対応が必要です。
1. 医療機関への受診
●便潜血検査で陽性となった場合、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要です。医師が問診や診察を行い、必要な検査について説明いたします。
2. 精密検査の実施
●精密検査では、大腸内視鏡検査が最も一般的です。 (当院で検査が可能です)
・大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入し、大腸の内側を直接観察する検査です。
・ポリープやがんを発見した場合、組織を採取して病理検査を行うことができます(生検)。
・ポリープやがんを切除することも可能です。
●その他、必要に応じてCT検査やMRI検査などの画像検査が行われることもあります。
3. 医師の説明と相談
●精密検査の結果が出たら、医師から説明を受け、今後の治療方針について相談しましょう。
●大腸がんと診断された場合は、がんの進行度に応じて、手術、化学療法、放射線療法などの治療が行われます。
●大腸がんでなかった場合でも、ポリープや炎症性腸疾患など、他の病気が見つかることがあります。その場合は、適切な治療を受けましょう。
便潜血陰性の場合
便潜血検査で陰性だった場合でも、安心するのはまだ早いです。以下の点に注意してください。
1. 陰性でも大腸がんの可能性はゼロではない
●潜血検査は、あくまでスクリーニング検査です。早期の大腸がんや、出血が少ない場合は、陰性となることがあります。
●特に、小さなポリープや早期のがんは、出血しないことがあるため、陰性となる場合があります。
2. 定期的な検査の重要性
●便潜血検査が陰性であっても、定期的に検査を受けることが大切です。
●特に、40歳以上の方や、大腸がんの家族歴がある方は、定期的な検査が推奨されます。
●検査の間隔は、医師と相談して決めましょう。
3. 症状がある場合は医師に相談
●便潜血検査が陰性でも、便通異常(便秘と下痢の繰り返し、便が細くなるなど)、腹痛、血便などの症状がある場合は、自己判断せずに医師に相談してください。
●症状によっては、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要になることがあります。
4. 大腸内視鏡検査の検討
●便潜血検査が陰性でも、大腸がんのリスクが高いと判断される場合は、大腸内視鏡検査を検討しましょう。
●大腸内視鏡検査は、大腸の内部を直接観察できるため、より正確な診断が可能です。
●特に、家族に大腸がんの既往歴がある場合や、過去に大腸ポリープを切除したことがある場合は、医師に相談して大腸内視鏡検査を受けることを検討してください。
検査の精度について
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便潜血検査は、大腸がんのスクリーニング検査として有用ですが、100%正確ではありません。
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偽陰性(がんがあるのに陰性となる)や偽陽性(がんがないのに陽性となる)が起こりうることを理解しておきましょう。
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特に、早期のがんや小さなポリープは、出血しないことがあるため、陰性となる場合があります。
便潜血検査の限界
早期がんや小さなポリープ:
●早期のがんや小さなポリープは、出血量が少ないため、便潜血検査で検出できないことがあります。
出血の間欠性:
●大腸がんやポリープからの出血は、常に起こっているわけではありません。
●そのため、便を採取したタイミングによっては、出血が検出されないことがあります。
出血部位:
●便潜血検査は、主に大腸からの出血を検出する検査です。
●小腸や胃からの出血は、便潜血検査で検出できないことがあります。
その他の原因:
●痔、肛門裂傷、大腸憩室など、大腸がん以外の病気でも便潜血陽性となることがありま
検査を受ける際の注意点
便潜血検査を受ける際の注意点はいくつかあります。以下に主な注意点をまとめました。
1. 検査前の注意点
生理中の場合:
生理中の女性は、生理が終わってから検査を受けるようにしましょう。生理中の出血が便に混入し、正しい検査結果が得られない可能性があります。
食事制限:
免疫化学的法の場合は、通常、食事制限は必要ありません。
化学法の場合は、検査数日前から肉や特定の野菜などの摂取を控える必要があります。医師から指示があった場合は、それに従ってください。
薬の服用:
特定の薬(抗凝固薬、抗血小板薬など)を服用している場合は、医師に相談してください。
痔の症状:
痔の症状がある場合は、医師に相談してください。
2. 検査中の注意点
採取方法:
検査キットに付属の説明書をよく読み、正しい方法で便を採取してください。
採取する便の量や採取する場所(便の表面、内部など)は、検査キットによって異なる場合があります。
採取日:
指定された日数分の便を採取し、採取した日付を検査キットに記入してください。
保管方法:
採取した便は、高温多湿を避け、涼しい場所に保管してください。
提出期限:
指定された期限内に検査キットを提出してください。
3. 検査後の注意点
検査結果:
陽性となった場合は、必ず精密検査を受けるようにしてください。
陰性の場合でも、大腸がんを完全に否定することはできません。便潜血検査はあくまで簡易的な検査ですので、定期的な内視鏡検査もお勧めします。
体調の変化:
検査後に体調に変化があった場合は、医師に相談してください。
便潜血検査を受ける頻度
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厚生労働省の指針では、40歳以上の方は、年に1回の便潜血検査が推奨されています。
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大腸がんのリスクが高い方は、医師と相談して、検査の間隔を短くすることを検討しましょう。
便潜血検査以外の検査
大腸内視鏡検査:
●大腸内視鏡検査は、大腸の内部を直接観察できるため、便潜血検査よりも精度が高い検査です。当院では定期的な大腸内視鏡検査をお勧めしています。
●ポリープやがんを発見した場合、組織を採取して病理検査を行うことができます。
●ポリープを切除することも可能です。
大腸CT検査(仮想大腸内視鏡検査):
●CTスキャンを用いて大腸の3D画像を作成し、ポリープやがんを検出する検査です。
●大腸内視鏡検査に比べて侵襲性が低いですが、ポリープが見つかった場合は大腸内視鏡検査が必要です。
その他
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便潜血検査は、大腸がんのスクリーニング検査として非常に有効ですが、万能ではありません。
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気になる症状がある場合は、便潜血検査の結果に関わらず、医療機関を受診してください。
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大腸がんの早期発見、早期治療のためにも定期的な検診を推奨します。
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