炎症性腸疾患者さんの食事について、よくある質問をまとめました。
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Q.栄養に関してどのような注意が必要ですか?
A.炎症性腸疾患の症状と栄養障害の関係…腸管に炎症があると下痢や急に排便を催したり、腹痛、吐き気、血便、食欲不振、疲れやすさ、体重減少などを来し栄養不良の原因となります。また、排便回数が多い場合や食事によって腹痛が出現する場合は、患者さんが自ら食事を控えてしまうことがあり、その結果更に栄養不良となってしまいます。
吸収不良について…炎症性腸疾患の患者さんでは、腸管等の炎症の為にカロリー消費量が増え、体重が減少してしまう事も知られています。特に小腸に炎症のあるクローン病患者さんでは、小腸でのアミノ酸、脂肪酸、糖質、ビタミン、電解質の消化、吸収が阻害されます。また、潰瘍性大腸炎の患者さんでは水分の吸収が阻害され、特に術後などでは下痢や排便回数が増加することとなります。
成長障害について…炎症性腸疾患のお子様では、成長が障害されることがあります。その原因として、炎症による直接的な成長への影響や、ステロイド薬投与での腹痛などによる食事摂取量の減少や腸管炎症による吸収不良などがあげられます。したがって、成長に必要な十分量の栄養を摂り、腸の炎症をコントロ-ルすることが正常な発育を得るために重要となります。また、ステロイド薬の使用は最小限とし、適切な運動や睡眠を確保することも重要です。
骨密度について…炎症性腸疾患の患者さんでは、大人でもお子さんでも骨密度の低下が起こります。骨粗鬆症まで進行すると骨折の危険があります。適切な身体活動、適度の日光浴、腸の炎症のコントロールに加えて、カルシウムやビタミンDの適切な摂取が必要です。
炎症性腸疾患の治療薬について…副腎皮質ステロイド薬は特に長期に使用をした場合、骨密度の低下の原因となる為カルシウムやビタミンDの補充を考える必要があります。
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Q.腸の炎症を改善させる食事療法はありますか?
A.特定の食事が腸を改善させるというエビデンスはありません。したがって食事のみで治療を行うことは勧められません。腸に炎症がある場合や狭窄がある場合などでは、食事内容によっては症状が悪化することがあり注意が必要でしょう。また、特にクローン病では栄養不良などを合併しやすく総摂取カロリーや各栄養素の摂取には十分に留意する必要があります。
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Q.症状が出ないよう避けた方が良い食事はありますか?(管理栄養士の視点から)
A.炎症性腸疾患の患者様は、食事内容によって腹痛や下痢などの消化器症状を引き起こすことがあります。油の多いもの、牛乳・乳製品・スナック菓子や洋菓子、香辛料などの刺激物、炭酸飲料やアルコール飲料、牛肉や豚肉などの動物性たんぱく質、人工甘味料など様々です。しかし、個人差がありますので重要なことは自分の体質に合う・合わないを見つけておくことです。体質に合わない食品が多い場合は食事バランスに偏りが出る為、管理栄養士に相談しましょう。
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Q.全体のエネルギー必要量はどの程度ですか?
A.炎症性腸疾患の患者さんの場合、標準体重(㎏)[身長(ⅿ)×身長(m)×22]×体重1㎏あたりの必要量[30~35kcal]=必要エネルギー量となります。
例えば160㎝の方であれば、1.6m×1.6m×22×30~35kcal=1690~1971kcal/日となります。また、成長期のお子さんでは成人に比べてより多くのエネルギー量を設定する必要があり、体格などに応じてここに所要エネルギー量を設定する必要があります。全体としてはきちんと食事や栄養の摂取を行い、標準体重または体調が安定している通常の体重を基本として、日々体重を計測して確認していくと良いでしょう。
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Q.食品添加物についての注意はありますか?
A.近年、日本を含むアジア諸国等で、炎症性腸疾患の患者さんが増えている原因として、食事などの環境因子の変化が関係しているのではないかと考えられています。特に、加工食品に含まれる様々な食品添加物が患者さんの増加に関係しているのではないか考える研究者も少なくありません。しかし、一度発症した炎症性腸疾患の患者さんにおいて、これらの食品添加物を除いた食事が病気を改善させるという研究はありません。可能であれば出来る限り加工食品ではなく自宅で食事を準備し、食品添加物の摂取を少なくする事が勧められます。
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Q.下痢をしている時はどのような注意が必要ですか?
A.下痢が続くと脱水症になりやすく、脱水になると、倦怠感、脱力、立ち眩みなどが出現することがあります。便中には、ナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、その為水分はお茶かお水よりも経口補水液を使用することが推奨されます。経口補水液は水やお茶に比べて吸収速度が速いのが特徴です。また個人差がありますが、下痢を引き起こしやすい食品が分かってる場合は、その食品を避けるようにしましょう。下痢が頻回にある場合は早めに受診をしましょう。
詳しくは医師にご相談ください。
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