きくクリブログ

2025.08.29更新

 

じんましんとは

じんましん(蕁麻疹)は、突然皮膚に赤みや膨らみ(膨疹)が現れ、強いかゆみを伴う病気です。

多くは数時間以内に消え、跡は残りません。

原因や症状はさまざまですが、日常生活の中で比較的よくみられる皮膚疾患です。

多くの場合は命にかかわりませんが、まれに重症化することもあります。

 

症状の特性

じんましんの症状は、皮膚に急に現れる赤い膨らみと強いかゆみです。

膨疹は地図状に広がることもあり、数ミリから数センチまで大きさはさまざまです。

特徴的なのは、数時間以内に消えてしまうことです。掻くことで広がったり悪化したりすることもあります。

まぶたや唇、のどなど粘膜に症状が出ると、腫れや息苦しさを伴うことがあり、注意が必要です。

 

じんましんが起こるきっかけ

じんましんはさまざまなきっかけで発症します。

代表的なものには、特定の食べ物(魚介類、卵、乳製品、ナッツなど)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛剤など)、感染症、ストレス、疲労、物理的刺激(圧迫、摩擦、寒冷、日光など)、発汗や運動、アレルギー反応などがあります。

原因が特定できない場合も多く、その場合は「特発性じんましん」と呼ばれます。

 

じんましんのタイプ

じんましんは、発症の仕方や原因によっていくつかのタイプに分かれます。

急性じんましん

発症から1か月以内に治まるもの。多くは数日~1週間で治ります。

 

慢性じんましん

1か月以上、繰り返し症状が出るもの。原因不明なことが多いです。

 

物理性じんましん

皮膚への圧迫や摩擦、寒冷、温熱、日光などで起こるもの。

 

コリン性じんましん

発汗や運動、入浴などで体温が上がったときに現れる小さな膨疹。

 

アレルギー性じんましん

特定の食物や薬剤、虫刺されなどで発症します。

 

 

発生部位ごとの特性

じんましんは体のどこにでも発症しますが、まぶたや唇、のどなど粘膜に出る場合は特に注意が必要です。

のどや気道が腫れると呼吸困難を引き起こすことがあり、緊急対応が必要となります。

 

 

じんましんを引き起こす主な疾患

じんましんは単独で発症することもありますが、他の疾患が原因となる場合もあります。

代表的なものには、感染症(ウイルス、細菌、真菌)、自己免疫疾患(甲状腺疾患、膠原病)、内臓疾患(肝臓や腎臓の病気)、アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎)などがあります。

これらが関与している場合は、他の症状も伴うことが多いです。

 

 

セルフケアのポイント

じんましんの症状を和らげるためのセルフケアには、以下のような方法があります。

 

・かゆい部分を冷やす

・刺激の強い衣服や化粧品を避ける

・入浴はぬるめのお湯で短時間にする

・アルコールや香辛料など、血行を促進するものを控える

・ストレスや疲労をためない

・規則正しい生活を心がける

・原因と思われる食べ物や薬を控える

 

ただし、症状が強い場合や広範囲に及ぶ場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。

 

 

受診するタイミング

次のような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

 

・じんましんが繰り返し出る、1週間以上続く

・顔やのど、口の中に腫れが出た

・息苦しさや声がれ、呼吸困難がある

・全身に広がる、発熱や倦怠感を伴う

・市販薬やセルフケアで改善しない

 

特に、呼吸困難や意識障害を伴う場合は、すぐに救急受診が必要です。

 

 

検査と診断

じんましんの診断は、基本的に問診と視診で行います。

必要に応じて、血液検査やアレルギー検査、皮膚テストなどを実施します。

検査は症状や経過、全身状態に応じて選択されます。

 

 

治療について

じんましんの治療は、抗ヒスタミン薬の内服が基本です。

症状が強い場合には、ステロイド薬や他の薬剤を併用することもあります。

原因が特定できれば、その除去や回避が重要です。

慢性じんましんの場合は、生活習慣の見直しやストレス管理も大切です。

 

 

診察の流れ

診察では、症状の経過や発症状況、既往歴、服用薬、生活習慣などについて詳しくお聞きします。

皮膚の状態を観察し、必要に応じて検査を行います。

原因が特定できる場合は、その説明と対策をお伝えします。

不安な点や気になることがあれば、遠慮なくご相談ください。

 

最後に
じんましんは多くの場合、適切な治療とセルフケアで改善します。しかし、重症化することもあるため、自己判断せず、気になる症状があれば早めに皮膚科を受診してください。当院では、患者さん一人ひとりの症状や生活背景に合わせた診療を心がけています。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

~監修 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一~

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

2025.08.25更新

 

 

クーラー病とは?

暑い夏にエアコンは欠かせないものですが、「クーラー病」という言葉を聞いたことはありますか?

正式な病名ではありませんが、冷房の効いた部屋と暑い外気との急激な温度差によって、私たちの体の調子が崩れてしまうことを指します。

自律神経のバランスが乱れることが主な原因です。

 

症状の特徴

クーラー病の症状は人によってさまざまですが、以下のようなものがよく見られます。

 

explosion手足の冷えやむくみ

explosionだるさや疲労感

explosion肩こり、頭痛、腰痛

explosionお腹の不調(腹痛、下痢、便秘)

explosion食欲不振

explosion風邪のような症状

 

クーラー病が起こる原因

私たちの体には、自律神経の働きによって体温を一定に保つ機能が備わっています。

しかし、冷房の効いた室内と暑い屋外を頻繁に行き来すると、この自律神経が過剰に働いてしまい、バランスが崩れてしまうのです。

すると、血行不良や体温調節機能の低下が起こり、さまざまな不調として体に現れます。

 

クーラー病の症状の種類

クーラー病は、主に「冷え型」「乾燥型」「自律神経失調型」の3つに分けられます。

 

・冷え型

冷えによって血行が悪くなり、手足の冷えやむくみ、肩こりなどの症状が出ます。

 

・乾燥型

エアコンの風で皮膚や喉、目が乾燥し、肌荒れやドライアイ、喉の痛みなどを引き起こします。

 

・自律神経失調型

温度差によるストレスで自律神経が乱れ、だるさ、頭痛、不眠、イライラなどの症状が出ます。

 

クーラー病の発生部位ごとの特徴

体の冷えが原因で、不調が特定の部位に現れることがあります。

 

・首、肩

血行不良により、肩や首の筋肉がこわばり、肩こりや首こりの原因になります。

・お腹

内臓が冷えることで、消化機能が低下し、腹痛や下痢を引き起こしやすくなります。

・足

冷気は下にたまりやすいため、特に足元が冷えやすく、むくみや冷えの原因になります。

 

クーラー病が引き起こす主な疾患

クーラー病そのものが病気というわけではありませんが、その症状が他の疾患と重なることがあります。

例えば、自律神経の乱れがひどくなると自律神経失調症に近い状態になることもありますし、冷えからくる頭痛は片頭痛と間違われることもあります。

 

クーラー病を和らげるために自分でできる対処法は?

まずはご自宅でできる簡単な対策を試してみましょう。

 

エアコンの温度調整: 外気温との差が5℃以内になるように設定するのが理想です。難しければ、設定温度を28℃くらいにしてみましょう。

 

体を冷やさない工夫: カーディガンやひざ掛け、腹巻などを活用して、冷たい空気が直接体に当たらないようにしましょう。

 

温かいものを摂る: 冷たい飲み物や食べ物を避け、温かいスープや飲み物を意識して摂るようにしましょう。

 

入浴: シャワーで済まさずに、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで、体の芯から温まり、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

 

適度な運動: ウォーキングやストレッチなどの軽い運動で血行を良くし、冷えにくい体を目指しましょう。

 

受診をした方が良い場合は?

自己対処をしても症状が改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。

explosion強い頭痛や吐き気がある

explosionめまいや立ちくらみが頻繁に起こる

explosion倦怠感がひどく、日常生活に支障が出ている

explosion原因不明の腹痛や下痢が続いている

explosion女性の場合は、生理不順がひどくなった

 

どのような治療が行われるの?

診断は、問診と検査結果を総合的に判断して行います。

治療の中心は、生活習慣の改善や自律神経のバランスを整えるためのアドバイスです。

必要に応じて、症状を和らげるための内服薬を処方することもあります。

 

最後に…
夏の体調不良は「暑さのせい」と我慢しがちですが、実はクーラー病かもしれません。

早めの対策で、元気に夏を乗り切りましょう。

何か気になる症状があれば、いつでもお気軽に菊川内科皮膚科クリニックにご相談ください。

 


監修:俊爽会 理事長 

日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 

日本内科学会 総合内科専門医  小林俊一

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

2025.08.22更新

「ひょうそ」とは?

「ひょうそ」という言葉、あまり聞きなれないかもしれません。

でも、爪の周りが赤く腫れて、ズキズキと痛んだり、膿が出たりする症状に心当たりのある方は多いのではないでしょうか?

「ひょうそ」は、医学的には「爪囲炎(そういえん)」や「化膿性爪囲炎(かのうせいそういえん)」と呼ばれ、爪の周りの皮膚に細菌が感染して炎症を起こす病気のことです。

特に、指先をよく使う方、手や足に小さな傷ができやすい方、甘皮のお手入れをする方などは、注意が必要です。

 

「ひょうそ」の症状の特徴

ひょうそは、症状の進行によって現れ方が変わります。

初期の段階では、爪の周りが少し赤くなり、軽い痛みを感じる程度です。

しかし、時間が経つにつれて以下のような症状が出てきます。

 

・爪の周りの赤みと腫れ

・ズキズキとした強い痛み

・患部を押すと白い膿が出てくる

・熱を持った感じ

 

ひどくなると、爪が変形したり、剥がれてしまったりすることも。

特に、膿が出始めたら炎症がかなり進んでいるサインです。早めの対処が大切になります。

 

 

「ひょうそ」が起こる原因

ひょうその主な原因は、爪の周りの小さな傷から細菌が侵入することです。

例には、こんなものがあります。

 

・甘皮の処理

ネイルケアで甘皮を無理に押し上げたり、切りすぎたりすると、皮膚が傷つきやすくなります。

 

・深爪

深く爪を切りすぎると、爪の周りの皮膚が傷つき、細菌が入り込む隙間ができます。

 

・ささくれ

爪の周りのささくれを無理に引っ張ったり、噛んだりする癖がある方は要注意です。

 

・外傷

突き指や転倒などで指先をぶつけた際、小さな傷ができることがあります。

 

これらの傷口から、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌が入り込み、炎症を引き起こすのです。

 

 

「ひょうそ」の種類

ひょうそには、急性と慢性の2種類があります。

 

急性ひょうそ

細菌感染が原因で、急激に症状が現れます。

ズキズキとした強い痛みや腫れ、膿が特徴です。

治療をすれば比較的早く治ります。

 

慢性ひょうそ

カビ(真菌)や特定の菌が原因で、症状がゆっくりと進行します。

腫れや赤みが長期間続き、治りにくいのが特徴です。

特に水仕事をされる方や、糖尿病などの持病がある方は注意が必要です。

 

「ひょうそ」の発生部位ごとの特徴

ひょうそは、手足の指、どの指にも起こる可能性があります。

特に多いのは、親指や人差し指です。

 

手の指

日常的に物を触ったり、作業をしたりすることが多いため、小さな傷ができやすく、ひょうそになりやすい傾向があります。

 

足の指

蒸れやすい靴を履いていると、細菌が繁殖しやすい環境になります。

また、巻き爪や爪の切り方が悪いと、ひょうそを引き起こすことがあります。

 

 

「ひょうそ」を和らげるために自分でできる対処法は?

症状が軽いうちであれば、ご自宅でできることがあります。

 

・清潔に保つ

患部を石鹸で優しく洗い、清潔な状態を保ちましょう。

 

・消毒

消毒液(アルコールやイソジンなど)で患部を消毒し、細菌の繁殖を防ぎます。

 

・保護

清潔なガーゼや絆創膏で患部を覆い、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぎましょう。

 

ただし、これらの対処はあくまで応急処置です。

腫れや痛みがひどい場合、膿が出ている場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

 

 

どのような時に受診をした方が良い?

「ちょっとしたことだし…」と我慢してしまう方がいらっしゃいますが、以下のような症状が出たら、早めに皮膚科を受診しましょう。

 

・痛みが強く、日常生活に支障が出ている

・腫れが広がり、指全体が赤くなっている

・白い膿が出てきた

・熱が出たり、寒気がしたりする

・市販薬を試しても症状が改善しない

 

 

どのような検査が必要で、何を調べる?

当院では、まず医師が患部を丁寧に診察し、症状の程度を確認します。

 

視診

患部の赤み、腫れ、膿の状態を目で見て確認します。

 

触診

患部を軽く押して、痛みの有無や硬さを確認します。

 

細菌検査

膿が出ている場合は、その一部を採取し、原因となっている細菌の種類を特定します。

この検査によって、適切な抗生物質を選ぶことができます。

 

どのような診断と治療が行われるの?

診断の結果、ひょうそであることがわかった場合、症状の程度に合わせて治療法を提案します。

 

・軽度の炎症

抗生物質入りの塗り薬や、内服薬で炎症を抑えます。

 

・膿が溜まっている場合

必要に応じて、局所麻酔を行い、メスで皮膚を小さく切開し、溜まった膿を出す処置を行います。

この処置によって、痛みが劇的に和らぎ、治りも早くなります。

 

どのような診察が行われるの?

当院では、患者様の不安を和らげ、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な診察を心がけています。

 

問診

いつから症状が出たのか、どのような時に痛みを感じるかなど、詳しくお話を伺います。

 

視診・触診

患部の状態を細かく確認します。

 

治療方針の説明

診察の結果、どのような治療が必要か、治療期間はどれくらいかなど、わかりやすくご説明します。

 

ご不明な点や不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にご質問ください。

患者様一人ひとりに寄り添い、最適な治療を提供できるよう努めています。

 

最後に…

「たかが爪の周りのこと」と軽視されがちなひょうそですが、放置すると重症化し、爪が変形したり、骨髄炎などの重い病気に繋がることもあります。

「あれ?これってどうなの?」と感じたら、迷わずご相談ください。

皆様の健康を、私たちが全力でサポートいたします。

 

都営新宿線菊川駅より徒歩2分、菊川内科皮膚科クリニックです。

 

~監修 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一~

 

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

2025.08.15更新

アトピー性皮膚炎について


アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因」をもった人に発症する、かゆみを伴う慢性の皮膚の炎症です。

「アトピー素因」とは、アレルギーを起こしやすい体質のことで、具体的には、以下のような特徴が挙げられます。

 

・家族やご自身にアレルギー疾患(ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎など)がある

・IgE抗体(アレルギー反応に関わる抗体)を作りやすい体質

 

このアトピー素因に加え、様々な要因が複雑に絡み合い、皮膚のバリア機能が低下し、炎症が起こりやすい状態になります。

症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続きます。

 

疫学

アトピー性皮膚炎は、世界中で患者数が増加している疾患です。

特に先進国での発症率が高く、日本では、小児の10~20%、成人の5~10%が罹患していると言われています。

乳幼児期に発症することが多いですが、近年では成人になってから初めて発症するケースも増えています。性差による大きな違いはありません。

季節によって症状に変化が見られることも多く、冬場は空気が乾燥することで悪化しやすく、夏場は汗をかくことでかゆみが増すことがあります。

このように、アトピー性皮膚炎は、その時の環境や体調に大きく左右される病気なのです。

 

原因
アトピー性皮膚炎の原因は、一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。


1. 皮膚のバリア機能の低下

私たちの皮膚は、外からの刺激や異物の侵入を防ぎ、体内の水分が蒸発するのを防ぐ「バリア機能」をもっています。

アトピー性皮膚炎の患者様の皮膚は、このバリア機能が低下していることが分かっています。

その原因の一つとして、フィラグリンというタンパク質が関わっています。

フィラグリンは、皮膚の角質層を形成する重要な成分ですが、アトピー性皮膚炎の患者様の中には、このフィラグリンを作る遺伝子に異常がある方がいることが分かっています。

フィラグリンが不足すると、皮膚の細胞同士の結びつきが弱くなり、スカスカの状態になってしまいます。

その結果、アレルゲン(ダニ、ほこり、花粉など)や刺激物質(汗、石鹸、洗剤など)が皮膚の奥に侵入しやすくなり、さらに、皮膚の水分が外に逃げやすくなるため、乾燥肌になりやすいのです。

 

2. 免疫機能の異常

アトピー性皮膚炎の患者様は、免疫機能に異常があり、アレルゲンに対して過敏に反応してしまいます。

通常は無害な物質であるダニやほこりに対しても、過剰な免疫反応が起こり、炎症を引き起こします。

 

3. 遺伝的要因

アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因が大きく関わっています。

両親のどちらか、または両方がアトピー性皮膚炎である場合、お子様が発症するリスクは高くなります。

 

4. 環境要因

環境要因もアトピー性皮膚炎の発症や悪化に影響を与えます。

 

・アレルゲン: ダニ、ほこり、ハウスダスト、花粉、ペットのフケなど

・刺激物質: 汗、乾燥、紫外線、衣類の摩擦、石鹸、洗剤、シャンプーなど

・ストレス: 精神的なストレスは、かゆみを増幅させ、症状を悪化させることがあります。

・食生活: 特定の食物がアレルゲンとなり、症状を引き起こすこともあります。

 

これらの要因が複合的に作用し、皮膚のバリア機能が破綻し、かゆみと炎症の悪循環に陥るのです。

 

診断

アトピー性皮膚炎の診断は、主に問診と視診によって行われます。

診断のポイントは以下の通りです。

 

・かゆみがあること
・皮膚炎が慢性的(乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上)に続いている、または繰り返していること
・皮膚炎の分布や特徴(左右対称性、年齢による特徴的な皮疹)
・アトピー素因(家族歴や既往歴)の有無

 

これらの基準を総合的に判断して診断を下します。血液検査でIgE抗体の値や、特定のアレルゲンに対するIgE抗体を調べることがありますが、これはあくまで補助的な診断です。

 

治療

アトピー性皮膚炎の治療は、「悪化要因を取り除くこと」と「皮膚の炎症を抑えること」の2つが柱となります。

 

1. 生活習慣の改善

薬物療法に加えて、日々の生活習慣を見直すことが、治療の成功には不可欠です。

 

保湿: 乾燥はアトピー性皮膚炎の大敵です。入浴後や、乾燥が気になる時には、こまめに保湿剤を塗るようにしましょう。

 

スキンケア: 強くこすらず、優しく洗うことが大切です。刺激の少ない石鹸やシャンプーを選び、ぬるま湯で洗い流しましょう。

 

汗対策: 汗をかいたら、すぐにシャワーを浴びたり、濡れたタオルで拭いたりして、清潔な状態を保ちましょう。

 

衣類: 肌触りの良い綿素材の衣類を選び、ウールや化学繊維など刺激の強い素材は避けましょう。

 

アレルゲン対策: 部屋をこまめに掃除し、ダニやほこりを取り除くようにしましょう。

 

ストレス対策: 適度な運動や趣味を見つけるなどして、ストレスを上手に発散することも大切です。

 

 

2. 薬物療法

アトピー性皮膚炎の治療薬には、外用薬と内服薬があります。

 

外用薬(塗り薬)

(1)ステロイド外用薬

炎症を強力に抑える効果があります。症状の程度に合わせて、弱いものから強いものまで、様々な種類があります。

副作用を心配される患者様もいらっしゃいますが、医師の指示通りに、適切な量を、適切な期間使用すれば、副作用のリスクは最小限に抑えられます。

自己判断で塗るのをやめたり、量を減らしたりせず、必ず医師の指示に従ってください。

 

(2)タクロリムス軟膏

ステロイドではない、新しいタイプの外用薬です。ステロイドでコントロールが難しい場合や、顔など皮膚の薄い部分に使用されることが多いです。

 

(3)コレクチム軟膏

JAK阻害剤という新しいタイプの塗り薬で、かゆみと炎症の原因となるサイトカインの働きをブロックします。

2020年に保険適用となり、新たな治療選択肢として注目されています。

 

内服薬(飲み薬)

(1)抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

かゆみを抑えるために使用されます。眠気などの副作用に注意が必要です。

(2)ステロイド内服薬

重症の場合に、一時的に炎症を抑えるために使用されます。長期使用は副作用のリスクがあるため、医師の指示を厳守してください。

(3)シクロスポリン内服薬

免疫抑制剤の一種で、重症の患者様に使用されます。

 

3. 生物学的製剤(注射薬)

従来の治療で効果が見られない、重症の患者様に対する新しい治療法です。

 

4. 光線療法

紫外線の一種であるUVAやUVBを患部に照射することで、炎症を抑える治療法です。

週に数回、医療機関で治療を行います。

 

予防、対策

アトピー性皮膚炎は、症状の波があるため、良い状態を保つことが重要です。

1. 日常生活での対策

毎日のスキンケア: 保湿と洗浄を習慣化しましょう。

掻かない工夫: かゆみを感じたら、冷やす、保湿剤を塗るなどして、掻かないように心がけましょう。爪を短く切ることも有効です。

環境整備: こまめな掃除、換気を行い、アレルゲンを減らしましょう。

体調管理: 規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な睡眠は、免疫力を高め、症状の安定に繋がります。

 

2. 医師との連携

アトピー性皮膚炎の治療は、患者様と医師の二人三脚で進めていくことが大切です。

症状が落ち着いている時でも、定期的に診察を受け、皮膚の状態をチェックしてもらいましょう。

症状が悪化した場合や、かゆみで眠れないなど、日常生活に支障をきたす場合は、すぐに受診してください。

 

その他

1. 食物アレルギーとの関係

乳幼児期のアトピー性皮膚炎では、食物アレルギーを合併していることがあります。

しかし、自己判断で特定の食べ物を除去することは、栄養不足に繋がる可能性があるため、必ず医師の指導のもとで行ってください。

 

2. 合併症

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌やウイルスに感染しやすい状態です。

特に、とびひ(伝染性膿痂疹)やヘルペスなどの感染症には注意が必要です。

また、アトピー性皮膚炎の患者様は、アレルギー性鼻炎や気管支ぜんそく、アレルギー性結膜炎などを合併しやすいことが知られています。

 

3. 精神的なケア

かゆみや見た目の問題から、精神的なストレスを感じる患者様も少なくありません。ご家族や周囲の理解とサポートが非常に大切です。

 

最後に

アトピー性皮膚炎は、完治が難しい病気と言われることもありますが、適切な治療と日々のケアで、症状をコントロールし、健やかな肌を保つことは十分に可能です。

つらい時は一人で悩まず、いつでもご相談ください。

 

都営新宿線菊川駅より徒歩2分、菊川内科皮膚科クリニックです。

~監修 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一~

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

2025.08.04更新


夏の体調不良、もしかして「食中毒」かも?

いよいよ本格的な夏がやってきました。

夏は楽しいイベントがたくさんありますが、実は体調を崩しやすい季節でもあります。

「夏風邪かな?」と思っていたら、実は食中毒だった、なんてことも珍しくありません。

「食中毒って、なんだか他人事のように感じる…」そんな方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、食中毒の原因菌は、身の回りのどこにでも潜んでいます。

このブログでは、食中毒を予防するためのヒントや、もしもの時の対処法等についてお話しさせていただきます。

 

食中毒とは?症状の特徴と原因

食中毒とは、食べ物や飲み物と一緒に、体に有害な細菌やウイルスなどが体内に入り、お腹の調子が悪くなる病気です。

食中毒と聞くと、激しい下痢や嘔吐をイメージされるかもしれませんが、軽度の発熱や腹痛、倦怠感だけで済む場合もあります。

 

主な症状は以下の通りです。

 

・下痢

・嘔吐、吐き気

・腹痛

・発熱

・全身の倦怠感

 

これらの症状は、原因となる菌やウイルスによって、食べた直後から数日後まで、現れるタイミングが異なります。

 

 

食中毒が起こる主な原因

食中毒の原因は多岐にわたりますが、夏の食中毒の多くは「細菌性食中毒」です。

高温多湿な環境は、細菌が繁殖するのに最適なため、食材の管理には特に注意が必要です。

主な原因菌としては、サルモネラ菌やカンピロバクターなどが知られています。

これらは加熱が不十分な肉や卵、生野菜などから感染することが多く、ご家庭でも注意が必要です。

 

もしも食中毒かな?と思ったら…自分でできる対処法

「なんだかお腹の調子が悪い…」と感じた時、ご自身でできる対処法はいくつかあります。

 

1. 水分補給をこまめに行う

下痢や嘔吐で一番怖いのは脱水症状です。

スポーツドリンクや経口補水液を少しずつ、こまめに飲むようにしてください。

 

2. 胃腸を休ませる

症状がひどい時は、食事は控えて胃腸を休ませてあげましょう。

症状が落ち着いてきたら、おかゆなど消化の良いものから少しずつ始めてください。

 

3. 下痢止め薬は自己判断で使わない

下痢は、体内にいる悪い菌や毒素を外に出そうとする体の防御反応です。

下痢止め薬で無理に止めてしまうと、かえって症状が悪化することもあります。

必ず医師にご相談ください。

 

こんな時はすぐにクリニックへ!
自分でできる対処法で様子を見ることも大切ですが、次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

・激しい下痢や嘔吐が止まらない

・血便がある

・水分がまったく摂れない

・高熱が続く

・お子様やご高齢の方、持病をお持ちの方

 

「もう症状が治まってきたけど、なんだかお腹の調子がずっと良くない…」

そんな場合も、ご相談ください。

一見、食中毒の症状が落ち着いたように見えても、別の病気が隠れている可能性もあります。

 

診断と治療

食中毒が疑われる場合は、まず問診で症状や食事内容を詳しく伺い、必要に応じて便の検査などで原因を特定します。

症状がひどい場合は、点滴で水分補給を行い、症状を和らげるためのお薬を処方します。

 

当院は内視鏡検査にも力を入れております。

「胃カメラ」や「大腸カメラ」と聞くと、辛いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、当院では患者様の負担をできる限り軽減できるよう、最新の内視鏡システムを導入しています。

「便秘や下痢が続く」「お腹の張りが気になる」といった慢性的な不調には、内視鏡検査で根本的な原因を調べることが大切です。

早期発見・早期治療のためにも、定期的な検査をお勧めしています。

 

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最後に…

食中毒は、日頃のちょっとした心がけで予防できる病気です。

食中毒予防の3原則「つけない・増やさない・やっつける」を意識して、安全な食生活を心がけましょう。

お腹の不調は、食中毒だけでなく、様々な病気のサインかもしれません。

些細なことでも「気になるな」と思ったら、お一人で悩まずに、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

都営新宿線菊川駅より徒歩2分、菊川内科皮膚科クリニックです。

 

 


監修:俊爽会 理事長 

日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 

日本内科学会 総合内科専門医  小林俊一

 

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

菊川内科皮膚科クリニック TEL0120-979-893 お気軽にお問い合わせください 内視鏡検査専用TEL:0120-979-893 菊川内科皮膚科クリニック TEL0120-979-893 お気軽にお問い合わせください 内視鏡検査専用TEL:0120-979-893