きくクリブログ

2025.06.26更新

溶連菌について

 

溶連菌とは

溶連菌は「溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)」という細菌の一種で、主にのどに感染することで発熱やのどの痛みなどの症状を引き起こします。

特にA群β溶連菌が原因になることが多く、子どもから大人までかかることがあります。

<主な症状>

・急に38~39℃くらいの高い熱が出る

・のどの強い痛みがある(唾を飲み込むのもつらいことがあります)

・のどや扁桃腺が赤く腫れる、白い膿がつくこともある

・体や手足に小さな赤い発疹が出ることがある

・舌がイチゴのようにブツブツになる(「イチゴ舌」)

 

頭痛、首のリンパ節の腫れ、腹痛や嘔吐などの症状もみられることがあります。

風邪と違い、咳や鼻水はほとんど出ません。

 

 

原因

溶連菌感染症は、「A群溶血性連鎖球菌(A群β溶連菌)」という細菌が体に感染することで起こります。

主な感染経路には以下のようなものがあります。

 

・飛沫感染
感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散った唾液や鼻水のしぶきを吸い込むことでうつります。

 

・接触感染
感染者が使ったタオルや食器、ドアノブなどを介して菌が手に付き、その手で口や鼻、目などを触ることで感染します。

 

・食品感染
まれに、溶連菌に汚染された食品を食べることで感染することもあります。

 

・その他の要因

 溶連菌は普段から人の鼻やのどの中にいることもありますが、体調が悪いときや免疫力が低下しているときに発症しやすくなります。

 

 

診断

溶連菌感染症の診断は、主に「症状」と「検査結果」を組み合わせて総合的に行います。

 

<主な検査方法>

現場でよく行われる検査は以下の3つです。

 

1. 迅速抗原検査(迅速診断キット)
綿棒でのどの奥をぬぐい、検体を採取して溶連菌の抗原があるかを調べます。 

結果は5~10分程度で分かり、診察当日に結果が出るため最も一般的に使われています。

ただし、菌が少ない場合や保菌者の場合は正確性に限界があるため、症状と合わせて判断します。

こちらの検査は当院でも行うことができ、10分ほどで結果が分かります。

 

2. 培養検査
綿棒で採取した咽頭ぬぐい液を培養して、溶連菌が実際に増殖するかを確認します。

より正確ですが、結果が出るまで数日~1週間ほどかかります。

 

3. 血液抗体検査(ASO・ASK)
血液を採取して、溶連菌に対する抗体(ASO、ASK)が増えているかを調べます。

抗体は感染後1週間ほどで上昇し始めるため、急性期の診断には向きませんが、合併症の診断や経過観察に使われます。

 

補足検査

合併症(急性糸球体腎炎など)が疑われる場合、尿検査や追加の血液検査を行うこともあります。

 

 

治療

溶連菌感染症の治療は、「抗生物質(抗菌薬)」を飲むことが基本です。

一番よく使われるのは「ペニシリン系」という種類の抗生物質です。アレルギーがある方には他の種類の抗生物質を使うこともあります。

抗生物質を飲み始めると、熱やのどの痛みは1~2日で楽になることが多いです。

ただし、症状が良くなっても自己判断で薬をやめてはいけません。

処方された期間(通常は7~10日間)は、必ず最後まで飲み切ることがとても大切です。

途中で薬をやめてしまうと、体の中に残った溶連菌が再び増えて、症状がぶり返したり、リウマチ熱や腎炎などの合併症を引き起こしたりすることがあります。

抗生物質を飲み始めて24時間ほど経つと、他の人にうつす心配はほとんどなくなります。

 

 

予防

溶連菌は、主に「飛沫感染」と「接触感染」でうつる細菌です。

日常生活でできる予防策をしっかり行うことで、感染を防ぐことができます。

 

<主な予防策>

・こまめな手洗い

外から帰ったとき、食事の前、トイレの後などは、石けんと流水でしっかり手を洗いましょう。

指の間や手首まで丁寧に洗うことが大切です。

 

・うがいの習慣

帰宅時や食事前にうがいをすることで、のどについた菌を洗い流すことができます。

 

・マスクの着用と咳エチケット

咳やくしゃみをするときはマスクを着用したり、口や鼻をハンカチやティッシュ、袖で覆いましょう。

周囲に感染を広げないためにも、マスクの着用は効果的です。

 

・タオルや食器の共用を避ける

家族間でもタオルや食器、歯ブラシなどは別々に使いましょう。

特に感染者がいる場合は、共有を避けてください。

 

・身の回りの消毒

ドアノブやおもちゃなど、よく触れる場所はアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどでこまめに消毒しましょう。

 

・感染者との濃厚接触を避ける

感染した方との接触はできるだけ控えましょう。

 

・早めの受診と治療

のどの痛みや発熱など、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。

 

 

症状が悪化した場合…

溶連菌感染症は、抗生物質をしっかり飲めば多くの場合すぐに良くなりますが、治療が不十分だったり、放置したりすると「合併症」と呼ばれる重い病気を引き起こすことがあります。

 

<悪化した場合に起こる主な合併症>

・リウマチ熱
溶連菌感染後2~3週間ほどして発症することがあり、関節が腫れて痛くなったり、心臓に炎症が起きることがあります。まれですが、心臓の弁膜症など後遺症を残すこともあります。

 

・急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)
こちらも感染後2~3週間で発症し、腎臓に炎症が起きます。むくみや血尿(赤黒い尿)、高血圧、頭痛などの症状が出ることがあります。

 

・劇症型溶連菌感染症
きわめてまれですが、急激に重症化し、命に関わることもある危険な病気です。急な発熱、強い痛み、意識障害などが現れます。

 

・その他
中耳炎、肺炎、敗血症、皮膚の発疹や紫斑など、さまざまな合併症が起こる可能性があります。

 

 

溶連菌感染症は、症状が軽くなっても自己判断で薬をやめず、必ず医師の指示通りに最後まで飲み切ることが大切です。

 

もし、のどの痛みや発熱が続く、体がむくむ、尿の色が赤黒い、関節が腫れる・痛む、息切れや動悸があるなど、気になる症状が出た場合は、早めにクリニックを受診してください。

 

合併症を防ぐためにも、治療後1か月ほど経ったら尿検査などの経過観察もおすすめしています。不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

 


都営新宿線菊川駅より徒歩2分、菊川内科皮膚科クリニックです。

【監修:俊爽会 理事長 小林俊一】

 

 

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

2025.06.12更新

疥癬について

★疥癬(かいせん)とは?
疥癬とは、ヒゼンダニ(疥癬虫)という非常に小さなダニが皮膚に寄生することで起こる感染症です。肉眼ではほとんど見えないダニですが、皮膚の角質層にトンネルを掘って寄生し、産卵することで強いかゆみなどの症状を引き起こします。

人から人へ感染する病気で、主に「通常疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2つのタイプがあります。

 

症状
疥癬の主な症状は激しいかゆみと皮膚の発疹です。特に夜間、体が温まるとかゆみが強くなるのが特徴です。


1.通常疥癬(つうじょうかいせん)
◌ かゆみ

夜間に特に強くなる激しいかゆみがあります。

◌ 皮 疹

①疥癬トンネル: メスのヒゼンダニが皮膚の角質層に掘った、数mmから1cm程度の灰白色の線状の盛り上がりです。指の間、手首の内側、肘、脇の下、下腹部、陰部、太ももの内側など、皮膚の柔らかい部分によく見られます。

②紅色丘疹(こうしょくきゅうしん): 赤いブツブツが体や四肢に散発します。
③結節(けっせつ): 陰部や脇の下、肘などにやや硬いしこりのようなものができることがあります。


2.角化型疥癬(かくかがたかいせん)(ノルウェー疥癬)
通常疥癬よりも非常に多くのヒゼンダニが寄生する重症型です。免疫力が低下している高齢者や病気の方に多く見られます。

◌ かゆみ

かゆみが軽度であることもありますが、非常に強い場合もあります。

◌ 皮 疹

全身の皮膚が厚くなり、フケのようにボロボロと角質が剥がれ落ちる(落屑)のが特徴です。頭や顔を含め全身に及ぶこともあります。この剥がれ落ちた角質の中には、大量のヒゼンダニが含まれており、感染力が非常に強いです。

 

原因
疥癬の原因は、ヒゼンダニ(疥癬虫)というダニが皮膚に寄生することです。
主な感染経路は3つあります。


1.直接接触感染
最も一般的な感染経路です。皮膚と皮膚が長時間直接触れることで、ダニが移動して感染します。例えば、寝具を共有する、手をつなぐ、抱き合うなどの密な接触が挙げられます。短時間の接触では感染しにくいとされています。
性的接触によって感染することもあります。


2.間接接触感染
患者さんが使用した寝具、衣類、タオルなどを共有することで感染することもありますが、通常疥癬では比較的まれです。


3.角化型疥癬の場合
感染力が非常に強いため、患者さんの皮膚から剥がれ落ちた角質(落屑)に触れ
るだけでも感染する可能性があります。そのため、短時間の接触や、寝具、衣
類、床などに残ったダニを介しても容易に感染が広がります。高齢者施設や病院
などで集団感染の原因となることがあります。
ヒゼンダニは乾燥に弱く、人の体から離れると数時間で感染力が低下します。また、50℃以上の熱で10分程度で死滅します。


治療法
疥癬は自然治癒することはほとんどなく、適切な治療が必要です。治療には内服薬と外用薬があります。

 

治療期間と経過

通常疥癬の場合、しっかりと治療すれば2週間から1ヶ月程度で症状が軽快し、終息することが多いです。
角化型疥癬の場合、ダニの数が非常に多いため、より長期間の治療(約2ヶ月程度)が必要となることがあります。
治療後も、かゆみや発疹がしばらく残ることがありますが、これはダニの死骸や排泄物に対するアレルギー反応であることが多く、心配ありません。しかし、再発の可能性もあるため、治療後も数ヶ月は皮膚の状態を注意深く観察し、医師の指示に従ってフォローアップを受けることが重要です。

 

予防法
疥癬の予防は、感染を広げないために非常に重要です。
1.早期診断と早期治療
かゆみなどの症状が見られたら、早めに皮膚科を受診し、診断と治療を開始することが最も重要です。

 

2.接触を避ける
患者さんとの長時間の肌の直接接触は避けましょう。
寝具、衣類、タオルなどの共有は避け、個別に管理しましょう。特に、パジャマや下着など、肌に直接触れるものは毎日交換することが望ましいです。

 

3.環境整備(特に角化型疥癬の場合)
個室での管理
角化型疥癬の患者さんの場合、感染力が非常に強いため、可能であれば個室で過ごしてもらうことが望ましいです。

 

◌ 衣類・寝具の洗濯・熱処理
患者さんが使用した衣類、シーツ、タオルなどは毎日交換し、50℃以上のお湯に10分以上浸すか、乾燥機にかけるなどして熱処理をしてから洗濯しましょう。洗濯できないものは、ビニール袋に入れて数日間密封しておくことでダニが死滅します。

◌ 掃 除
居室を中心に掃除機で丁寧に掃除しましょう。特に寝具やマットは念入りに掃除機をかけ、剥がれ落ちた角質を除去することが大切です。

◌ 入 浴
患者さんは毎日入浴し、厚くなった角質を優しくこすり落としましょう。入浴は家族の中で最後にするなど、他の人への感染を防ぐ工夫も有効です。浴槽や洗い場は使用後に水で流し、清掃しましょう。


◌ ケア時の感染対策
角化型疥癬の患者さんのケアをする際は、予防着や手袋を着用し、感染拡大を防ぎましょう。

 

まとめ
疥癬は早期に発見し適切な治療と予防策を講じることで治癒が期待できる病気です。ご自身や周囲の方に疑わしい症状が見られた場合は、ためらわずに当院にご相談ください。一緒に根気強く治療していきましょう。

 

 

都営新宿線菊川駅より徒歩2分、菊川内科皮膚科クリニックです。

 

【監修:俊爽会 理事長 小林俊一】

投稿者: 菊川内科皮膚科クリニック

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