帯状疱疹

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスが原因で発症する皮膚の病気です。このウイルスは、水ぼうそうが治った後も体内の神経に潜伏し、加齢やストレス、過労などで免疫力が低下すると再活性化して発症します。強い痛みを伴うことが特徴で、皮膚症状が治った後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という合併症を引き起こす可能性があります。早期に発見し、適切な治療を開始することが、症状の重症化や後遺症を防ぐ上で非常に重要です。

帯状疱疹って何?

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が引き起こす疾患です。このウイルスは、初めて感染した際に水ぼうそうを発症させ、その後、神経節に潜伏します。普段は免疫力によって活動が抑えられていますが、加齢、過労、ストレス、病気などにより免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化し、神経を伝って皮膚に到達して帯状疱疹の症状を引き起こします。水ぼうそうにかかったことがある人なら誰でも発症する可能性があります。

症状の特性

帯状疱疹の症状は、通常、身体の片側の神経に沿って現れます。まず、発疹が現れる数日前から、ピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛のような痛みが体の片側に生じることが多いです。この痛みは、発疹が出る前に起こるため、他の病気と間違われることもあります。痛みが先行した後、数日から10日ほどで、痛みのあった部位と同じ神経に沿って、赤く斑点状の発疹や小さな水ぶくれが帯状に多数出現します。皮疹は体の中心線をまたいで広がることは通常なく、左右どちらか片側に限局して現れるのが特徴です。発疹出現後72時間以内に抗ウイルス薬の服用を開始することが最も効果的とされています。

帯状疱疹が起こるきっかけ

帯状疱疹は、体内に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力が低下することで発症します。
主な要因は加齢で、50歳代から発症率が高くなります過労や過度のストレスも免疫力を低下させる主要な要因です。また特定の病気(がん、HIV感染症、糖尿病、膠原病など)やその治療(ステロイド薬、免疫抑制剤など)も免疫力低下の原因となります。不規則な生活や栄養バランスの偏りといった不健康な生活習慣もリスクを高めます。最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後、免疫機能の低下により帯状疱疹を発症するケースが増加しているという報告もあります。

帯状疱疹のタイプと発生部位ごとの特性

代表的な病気を5つご紹介します。

帯状疱疹には、体の片側に痛みと水ぶくれが帯状に現れる典型的なタイプの他に、免疫抑制状態が強い患者さんで全身に広がる播種性(汎発性)帯状疱疹や、痛みはあっても発疹が現れない無疱疹性帯状疱疹が存在します。
発症部位によって特有の症状や重篤な合併症を引き起こすことがあります。


・頭部・顔面(特に目の周り):失明に至る可能性のある眼合併症(角膜炎など)を伴うことがあります。
・耳(ラムゼイ・ハント症候群):顔面神経麻痺、聴力低下、めまいなどを伴うことがあります。
・体幹・四肢:手足の麻痺や、排尿・排便障害を引き起こすことがあります。
・中枢神経系(脳・脊髄):髄膜炎や脳炎、脳梗塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
・内臓播種性:免疫不全の患者さんでは、肺炎や肝炎など内臓感染を引き起こし、致命的となることがあります。

帯状疱疹を引き起こす主な疾患

帯状疱疹の発症には、特定の基礎疾患が隠れていることがあります。主なものとして、悪性腫瘍(がん)、特にリンパ腫や白血病などの血液がんが挙げられます。HIV感染症、臓器移植後の免疫抑制剤の使用、膠原病などの自己免疫疾患、糖尿病、ネフローゼ症候群なども免疫力低下を招き、帯状疱疹のリスクを高めます。

帯状疱疹の症状を和らげるためのセルフケアと受診のタイミング

帯状疱疹の症状を和らげるためには、安静と十分な休息が非常に大切です 。水ぶくれは清潔なガーゼなどで優しく保護し、掻きむしらないようにしましょう 。痛みが強い場合は、冷却や温熱が一時的な緩和に役立つことがあります 。また、栄養バランスの取れた食事を心がけることも重要です。
最も重要なのは早期受診です。発疹が現れてから72時間以内に抗ウイルス薬の服用を開始することが、治療効果を最大限に高め、帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクを大幅に減らす上で非常に効果的とされています体の片側にピリピリとした痛みや、それに続く赤い発疹・水ぶくれが出た場合は、できるだけ早く受診してください。特に、顔面、目の周り、耳の周りに症状が出た場合は、緊急性が高いです。

 

【帯状疱疹ワクチンを接種することで予防や発症後の症状の軽減があります。】
帯状疱疹ワクチンの種類と接種回数、予防効果は以下になります。
現在、日本で接種可能な帯状疱疹ワクチンは主に2種類あります。


乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン):1回接種(皮下注射)。50歳以上で約50%程度。 接種後1年で6割程度、5年で4割程度の予防効果が期待できます。注射部位の紅斑、かゆみ、熱感、腫れ、痛み、全身の倦怠感、発疹など、まれに重篤な副反応も出現する可能性があります。

乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)(不活化ワクチン):2回接種(筋肉内注射)(標準的に2ヶ月間隔。最長6ヶ月以内)。50歳以上で約97%程度、70歳以上で約89%程度。接種後1年で9割以上、5年で9割程度、10年で7割程度の予防効果が期待できます。注射部位の痛み、発赤、腫れ(70%以上)、筋肉痛、疲労、頭痛など、まれに重篤な副反応も出現する可能性があります。

 

【副反応について】
どちらのワクチンも、接種部位の痛みや腫れ、発赤といった局所的な副反応が比較的多く見られます。これは体が免疫を作ろうとする過程で起こる正常な反応です。

・生ワクチン:
比較的穏やかですが、接種部位の紅斑や掻痒感などが5割程度で認められます。
接種後1〜3週間後に発熱や水痘様発疹が見られることがありますが、通常は数日で消失します。
重篤な副反応は非常に稀ですが、アナフィラキシー、血小板減少性紫斑病、無菌性髄膜炎などが報告されています。

・不活化ワクチン(シングリックス):

生ワクチンに比べて、接種部位の痛み、発赤、腫れが強く出ることが多いです(全体の8割程度)。
全身症状として、筋肉痛、疲労、頭痛、悪寒、発熱、胃腸症状などが3割程度で報告されています。
これらの副反応は多くの場合、数日以内におさまります。
重篤な副反応は極めて稀ですが、ショック、アナフィラキシーなどが報告されています。

 

【接種できない方・注意が必要な方】

・生ワクチン:免疫機能が低下している方(免疫抑制剤の治療を受けている方、HIV感染者など)、妊娠している方などは接種できません。

・不活化ワクチン:免疫抑制状態の方でも接種可能ですが、アレルギー体質の方などは医師に相談が必要です。
どちらのワクチンも、明らかな発熱がある方や急性疾患にかかっている方は接種できません。
接種前に医師から十分な説明を受け、ご自身の健康状態や持病などを正確に伝え、どのワクチンを選択するか相談することが重要です。

当院では効果のあるシングリックスをおすすめしております。

 

どのような診察が行われるの?

菊川内科皮膚科クリニックでは、帯状疱疹の診察において、まず患者さんから症状について詳しくお伺いする問診を行います。次に、発疹や水ぶくれの状態を詳細に観察する視診を行います。患部の痛みや感覚の変化を確認するために、軽く触れる触診を行うこともあります。診察後、帯状疱疹の診断結果、病気の仕組み、今後の治療方針について、患者さんに分かりやすく説明し、納得のいく治療計画を一緒に立てていくことを心がけています。

どのような検査が必要で、何を調べる?

帯状疱疹の診断は、主に皮膚科医による詳細な視診と問診によって行われます 。発疹や水ぶくれの形状、分布、色、大きさなどを確認し、患者さんから症状や既往歴などを詳しくお伺いします。通常はこれらの診察で診断が確定することが多いですが、診断が難しい場合や免疫力が著しく低下している患者さんの場合などには、Tzanckテスト、ウイルス抗原検査/PCR検査、血液検査などの補助的な検査が行われることがあります。

どのような診断と治療が行われるの?

帯状疱疹の治療の基本は、原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の全身投与です。発疹出現後3日以内(72時間以内)の服用開始が最も効果的とされています。強い痛みに対しては
鎮痛剤が処方され、皮膚症状の改善や二次感染予防のために外用薬が処方されることもあります。ダメージを受けた神経の回復を助ける目的でビタミン剤が処方されることもあります。症状が重度の場合や免疫力が低下している患者さん、合併症を認める場合は、入院して抗ウイルス薬の点滴治療が必要となることがあります。

最後に…

帯状疱疹は、水ぼうそうにかかったことがある人なら誰でも発症する可能性のある、身近でありながらも、強い痛みを伴い、時に重篤な合併症や後遺症を残す可能性のある病気です。しかし、早期に適切な治療を開始することで、症状の悪化や、長期にわたる痛みの後遺症を防ぐことができます。「体の片側に原因不明のピリピリとした痛みや、それに続く赤い発疹・水ぶくれが出た」と感じたら、たかが皮膚の症状と軽視せず、できるだけ早く菊川内科皮膚科クリニックを受診してください。特に、発疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬の服用を開始することが、治療効果を最大限に引き出すための重要な目安となります。


皮膚科専門医在籍の菊川内科皮膚科クリニックまでお気軽にご相談ください。

菊川内科皮膚科クリニック TEL0120-979-893 お気軽にお問い合わせください 内視鏡検査専用TEL:0120-979-893 菊川内科皮膚科クリニック TEL0120-979-893 お気軽にお問い合わせください 内視鏡検査専用TEL:0120-979-893