逆流性食道炎(GERD)

逆流性食道炎(GERD)とは

逆流性食道炎(GERD)とは、胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。健康な人でも一時的に胃酸が逆流することはありますが、逆流が頻繁に起こったり、長時間続いたりすると、食道が炎症を起こし、様々な症状が現れます。特に繰り返す逆流性食道炎によって、食道下部の扁平上皮が胃酸による慢性的な炎症刺激により、円柱上皮に置き換わるバレット食道という前がん状態になることもあり注意が必要です。

食道のはたらき

食道は、咽頭(のど)と胃をつなぐ管状の臓器で、主に以下の2つの重要な働きを担っています。

1. 食物の輸送
食道は、口から摂取された食物を胃へと送り込む役割を果たします。
食道壁の筋肉が収縮と弛緩を繰り返す蠕動(ぜんどう)運動によって、食物を効率的に胃へと移動させます。この蠕動運動により、たとえ横になった状態でも、食物は重力に逆らって胃へと運ばれます。

2. 逆流防止
食道の上端と下端には、それぞれ上部食道括約筋と下部食道括約筋という筋肉が存在します。これらの括約筋は、通常は閉じていることで、食物や胃酸が食道へ逆流するのを防いでいます。
特に下部食道括約筋は、胃酸の逆流を防ぐ重要な役割を担っており、その機能が低下すると逆流性食道炎などの原因となります。

食道の構造

食道は、長さ約25cmの管状の臓器で、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、外膜の4層構造になっています。
筋層は、内側の輪状筋と外側の縦走筋から構成されており、これらの筋肉の協調的な運動が蠕動運動を可能にしています。

逆流性食道炎の原因

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道の粘膜に炎症が起こる病気です。その原因は多岐にわたり、大きく分けて以下の3つに分類できます。

 

1. 下部食道括約筋の機能低下
食道と胃のつなぎ目にある筋肉(下部食道括約筋)は、通常は閉じていることで胃酸の逆流を防いでいます。しかし、この筋肉の力が弱まったり、緩んだりすると、胃酸が食道に逆流しやすくなります。原因として以下のものがあります。
・加齢による筋力低下
・脂肪分の多い食事
・特定の薬の副作用(抗コリン薬、カルシウム拮抗薬など)
・喫煙
・アルコール

2. 胃酸の過剰分泌
胃酸の分泌量が増加すると、逆流する胃酸の量も増え、食道に炎症を起こしやすくなります。原因として以下のものがあります。
・ストレス
・香辛料の多い食事
・炭酸飲料
・コーヒー

3. 腹圧の上昇
腹圧が上昇すると、胃が圧迫され、胃酸が食道に逆流しやすくなります。原因として以下のものがあります。
・肥満
・妊娠
・便秘
・前かがみの姿勢
・きついベルトや衣服

4.その他の要因
・食道裂孔ヘルニア: 胃の一部が横隔膜の上に出てしまい、胃酸が逆流しやすくなります。
・生活習慣: 食後すぐに横になる、寝る直前に食事をするなどの習慣も、逆流性食道炎のリスクを高めます。
これらの要因が複合的に関与して、逆流性食道炎が発症することがあります。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

主な症状

  • 胸やけ:胸の中央部が焼けるような、ヒリヒリとした感覚。特に食後や横になった時に起こりやすい。
  • 呑酸(どんさん):酸っぱい液体が口まで上がってくる感覚。ゲップと一緒に出ることが多い。
  • 胸痛:胸の痛み、特に食後に起こりやすい。狭心症と間違われることもある。
  • 嚥下困難:食べ物や飲み物が飲み込みにくい。食道が炎症で狭くなっている場合に起こる。
  • 慢性の咳:特に夜間にひどくなる咳。胃酸が気管支を刺激することで起こる。
  • 喉の違和感:喉の痛み、イガイガ感、声のかすれ。胃酸が喉まで逆流することで起こる。

その他の症状

  • 胃もたれ
  • 吐き気
  • 腹部膨満感
  • 睡眠障害

症状の特徴

症状の程度は個人差が大きく、軽い胸やけ程度の人もいれば、日常生活に支障をきたすほど症状が重い人もいます。症状は、食生活や姿勢、ストレスなどによって悪化することがあります。症状が長期間続く場合は、食道下部の扁平上皮が胃酸による慢性的な炎症刺激により、円柱上皮に置き換わるバレット食道という前がん状態に変化し、食道がんのリスクを高める可能性があります。

注意点

これらの症状は、逆流性食道炎だけでなく、他の病気でも起こりうるため、症状だけで自己判断することは避けましょう。
特に、40歳以上の方や、症状が頻繁に起こる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

逆流性食道炎の診断

逆流性食道炎の診断は、症状の問診、内視鏡検査、その他の検査などを組み合わせて行われます。以下に、それぞれの検査について詳しく説明します。

1. 問診

医師が症状、生活習慣、既往歴などを詳しく聞き取ります。胸やけ、呑酸、胸痛、嚥下困難などの典型的な症状があれば、逆流性食道炎の可能性が高まります。

2. 内視鏡検査(上部消化管内視鏡検査)

内視鏡(細いカメラ)を口または鼻から挿入し、食道の粘膜を直接観察します。食道粘膜の炎症、びらん、潰瘍などの有無を確認し、逆流性食道炎の程度を評価します。必要に応じて、組織の一部を採取し、病理検査を行うこともあります。これにより、食道がんや他の疾患との鑑別も行えます。

3. その他の検査

・食道内pHモニタリング検査
食道内の酸性度を24時間測定する検査です。胃酸の逆流の頻度や程度を客観的に評価できます。内視鏡検査で異常が見られない場合や、症状が典型的なものでない場合に有用です。

・食道内圧測定検査
食道の筋肉の動きや圧力を測定する検査です。食道の運動機能障害の有無を評価できます。
アカラシアなどの他の疾患との鑑別に有用です。

・PPIテスト
プロトンポンプ阻害薬(PPI)という胃酸の分泌を抑える薬を一定期間服用し、症状の改善度を評価します。症状が改善すれば、逆流性食道炎の可能性が高いと判断できます。

診断のポイント
典型的な症状と内視鏡検査の結果を総合的に判断します。他の疾患との鑑別も重要です。
症状が軽い場合は、問診とPPIテストのみで診断することもあります。

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療は、主に生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることで行われます。重症の場合や薬物療法で効果が見られない場合には、手術が検討されることもあります。

サブタイプ 特徴  症状
IBS-D(下痢型) BSFSタイプ6・7の便が25%以上、タイプ1・2が25%未満 ・頻繁な水様便や軟便が見られます。
・急な便意を感じることが多く、トイレに間に合わないこともあります。
IBS-C(便秘型) BSFSタイプ1・2の便が25%以上、タイプ6・7が25%未満 ・便が硬く、排便回数が減少します。
・残便感を感じることがあります。
・コロコロとしたウサギの糞のような便が特徴です。
IBS-M(混合型) タイプ1・2と6・7の両方が25%以上 下痢と便秘が数日から数週間単位で交互に現れます。
IBS-U(分類不能型) 上記に該当しない 下痢や便秘、普通便など様々な症状

 

1. 生活習慣の改善

・食事の改善
脂肪分の多い食事、香辛料、柑橘類、チョコレート、コーヒー、アルコール、炭酸飲料などを控える。規則正しい食生活を心がけ、食べ過ぎない。就寝の2~3時間前までに食事を済ませる。

・生活習慣の改善
禁煙。肥満解消。食後すぐに横にならない。寝る時に上半身を少し高くする。ベルトやきつい衣服を避ける。ストレスをためないようにする。

・姿勢の改善
前かがみの姿勢を避ける。

2. 薬物療法

・胃酸分泌抑制薬:
1 プロトンポンプ阻害薬(PPI):最も効果の高い薬で、胃酸の分泌を強力に抑えます。
2 H2ブロッカー:PPIよりも効果は劣りますが、比較的安全に使用できます。
・消化管運動機能改善薬:食道の運動機能を改善し、胃酸の逆流を防ぎます。
・制酸薬・粘膜保護薬:胃酸を中和したり、食道粘膜を保護したりする薬です。

3.手術療法

薬物療法で効果が見られない場合や、食道裂孔ヘルニアを伴う場合などに検討されます。
腹腔鏡下手術で、下部食道括約筋を強化したり、食道裂孔ヘルニアを修復したりします。

治療のポイント

  • 生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることで、ほとんどの場合、症状は改善します。
  • 薬は医師の指示に従って服用し、自己判断で中止しないようにしましょう。
  • 症状が改善しても、再発予防のために生活習慣の改善を継続することが重要です。
  • 症状が改善しない場合や悪化する場合は、医師に相談しましょう。

注意点

  • 逆流性食道炎は、放置すると食道がんのリスクを高める可能性があります。
  • 自己判断で市販薬を服用せず、必ず医師の診断を受けましょう。
  • これらの治療法は、症状の程度や原因によって異なります。医師と相談しながら、最適な治療法を選択しましょう。

逆流性食道炎の予防

逆流性食道炎は、生活習慣の改善によって予防や症状の軽減が期待できます。以下の予防策を参考に、日常生活に取り入れてみましょう。

1. 食生活の改善

  • 脂肪分の多い食事を控える:脂肪は胃酸の分泌を促進し、胃の排出を遅らせます。揚げ物、肉の脂身、乳製品などは控えめにしましょう。
  • 刺激物や酸味の強い食品を控える:香辛料、柑橘類、炭酸飲料、コーヒー、アルコールなどは、胃酸の分泌を増やし、食道粘膜を刺激します。これらの食品は控えめにしましょう。
  • 規則正しい食生活を心がける:
    1日3食、決まった時間に食事を摂りましょう。早食いや食べ過ぎは避け、ゆっくりとよく噛んで食べましょう。
  • 就寝前の食事は避ける:就寝2~3時間前までに食事を済ませ、食後すぐに横にならないようにしましょう。
  • 食物繊維を積極的に摂取する:食物繊維は、消化を助け、便秘を解消する効果があります。野菜、果物、海藻類などを積極的に摂りましょう。

2. 生活習慣の改善

  • 肥満を解消する:肥満は腹圧を上昇させ、胃酸の逆流を招きます。適度な運動とバランスの取れた食事で、適正体重を維持しましょう。
  • 禁煙する:喫煙は下部食道括約筋の機能を低下させ、胃酸の逆流を促進します。
    禁煙を心がけましょう。
  • アルコールを控える:アルコールは胃酸の分泌を増やし、食道粘膜を刺激します。
    過度の飲酒は控えましょう。
  • 睡眠時の工夫:寝る時に上半身を少し高くすると、胃酸の逆流を防ぐことができます。
    クッションや枕などを利用して、上半身を10~15cm程度高くしましょう。
  • 腹圧を上げない:前かがみの姿勢や、きついベルト、衣服などは腹圧を上昇させます。
    姿勢に気をつけ、ゆったりとした服装を心がけましょう。
  • ストレスを溜め込まない:ストレスは胃酸の分泌を増やし、食道の機能を低下させる可能性があります。適度な運動や趣味などでストレスを解消しましょう。

3. その他

  • 適度な運動を習慣にする:適度な運動は、消化機能を促進し、ストレス解消にも役立ちます。ウォーキングやストレッチなど、無理のない運動を続けましょう。
  • 十分な睡眠をとる:睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、胃酸の分泌を増やします。
    質の良い睡眠を心がけましょう。
  • 定期的な検診を受ける:症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。これらの予防策は、逆流性食道炎だけでなく、他の消化器系の疾患予防にもつながります。日常生活に取り入れ、健康な食生活を送りましょう。

 

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