円形脱毛症
「円形脱毛症が起こる原因」
円形脱毛症は、髪の毛が突然抜けてしまう病気で、はっきりとした原因はまだ完全には分かっていません。ただ、近年では「自己免疫疾患」という体の免疫の異常が関与していると考えられています。免疫は本来、体を守る働きをしていますが、何らかのきっかけで自分の毛根を異物とみなして攻撃してしまうことがあり、その結果、毛根が傷つき髪の毛が抜けやすくなります。また、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー体質(アトピー素因)を持つ方、強い精神的ストレスや疲労、ホルモンバランスの変化、遺伝的な要素なども発症に関わることがあります。
「円形脱毛症の種類」
円形脱毛症にはいくつかの種類があります。
・単発型:1か所だけに円形または楕円形の脱毛斑ができる最も一般的なタイプです。
・多発型:複数の脱毛斑ができるタイプで、時に融合して広がることもあります。
・全頭型:頭髪全体が抜けてしまうタイプです。
・汎発型:頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛、体毛も抜けてしまうタイプです。
症状の現れ方や進行の仕方は人によって異なります。
「円形脱毛症を引き起こす可能性のある疾患」
円形脱毛症は、甲状腺疾患(橋本病など)や尋常性白斑、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチなどの自己免疫疾患と一緒に現れやすい傾向があります。また、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患を持つ方も発症しやすいことが知られています。
「円形脱毛症に対して自分でできることは?」
円形脱毛症は、ご自身で完全に治すことは難しいですが、次のようなことを心がけると良いといわれています。
・十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけましょう。
・バランスの良い食事を摂るようにしましょう。
・ストレスをためこまないよう、趣味やリラックスできる時間を持つことも大切です。
・頭皮を清潔に保ち、過度な刺激や摩擦を避けましょう。
・無理に抜け毛を引っ張ったり、頭皮を強くこすったりしないようにしましょう。
「受診をした方が良い場合は?」
次のような場合は、早めに皮膚科を受診されることをおすすめします。
・脱毛が急速に広がっている場合
・脱毛が複数箇所にできている場合
・眉毛やまつ毛、体毛にも脱毛が見られる場合
・爪にへこみやデコボコが出てきた場合
・1か月以上経っても改善しない場合
・強い不安や日常生活に支障がある場合
早めに受診することで、適切な治療を始めやすくなります。
「どのような検査が必要で、何を調べる?」
視診・問診: まず、脱毛のパターン、範囲、進行度などを直接見て、いつから、どのように脱毛が始まったのか、家族歴、アレルギー歴、既往歴、ストレスの有無などを詳しくお伺いします。
ダーモスコピー: 拡大鏡で頭皮や毛根の状態を詳細に観察します。感嘆符毛の有無や毛穴の状態などを確認します。
引抜き試験(ヘアープルテスト): 脱毛斑の周囲の毛を軽く引っ張り、簡単に抜けるかを確認します。これにより、脱毛症の活動性や進行度を評価します。
血液検査: 自己免疫疾患の合併の有無(甲状腺機能、自己抗体など)、アレルギー体質の確認、炎症反応などを調べることがあります。
病理組織検査(皮膚生検): 診断が難しい場合や、他の脱毛症との鑑別が必要な場合に、脱毛斑の皮膚組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。毛根部の炎症の様子などを確認します。
「どのような診断と治療が行われる?」
ステロイド外用療法: 脱毛斑にステロイドの軟膏やローションを塗布し、炎症を抑え、毛根への免疫攻撃を抑制します。
ステロイド局所注射: 脱毛斑に直接ステロイドを注射する方法です。比較的範囲の狭い脱毛に効果が期待されます。
局所免疫療法(SADBE療法、DPCP療法): 人工的にかぶれを起こす物質(SADBEやDPCP)を脱毛部に繰り返し塗布し、免疫反応のバランスを整える治療法です。難治性の円形脱毛症に有効とされています。
内服療法:
ステロイド内服薬: 急速に進行している場合や広範囲に及ぶ場合に、短期間内服することがあります。副作用のリスクも考慮されます。
JAK阻害薬: 重症の円形脱毛症に対して、近年承認された新しいタイプの内服薬です。免疫のシグナル伝達を阻害することで、脱毛を抑制し、発毛を促進します。
抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬: アレルギー体質が関与している場合や、かゆみがある場合に処方されることがあります。
液体窒素療法: 脱毛斑に液体窒素を軽く接触させることで、刺激を与え、発毛を促す方法です。
漢方薬: 体質改善を目的として、漢方薬が処方されることもあります。
紫外線療法(PUVA療法、エキシマライト): 特定の波長の紫外線を脱毛部に照射することで、免疫反応を調整し、発毛を促進する治療法です。
当院でも取り扱いのある機械となっております。
エキシマレーザー治療の特徴とメリット
円形脱毛症に対するエキシマレーザー治療には、いくつかのメリットがあります。
・高い治療効果: 治療に有効な308nmの波長のみを高出力で照射するため、従来の紫外線療法(PUVA療法やナローバンドUVB療法)に比べて、より高い治療効果が期待できます。
・ピンポイント照射: 脱毛している部位だけにレーザーを照射できるため、周囲の健康な皮膚に与える影響を最小限に抑えられます。これにより、日焼けや皮膚がんのリスクを低減できます。特に、頭部や顔、まゆげなど、狭い範囲やデリケートな部位の脱毛症にも適しています。
・短時間での治療: 1回の照射時間は数秒から数十秒と非常に短く、患者さんの負担が少ないです。
・ステロイドの使用量を減らせる可能性: ステロイド外用薬や内服薬との併用で治療効果を高めつつ、ステロイドの量を減らすことができる場合もあります。
・痛みがない: ほとんど痛みを感じることなく治療を受けられます。
・保険適用: 円形脱毛症の治療に対しては、保険が適用されることが多いです。これにより、費用負担を抑えながら治療を受けることができます。
最後に…
円形脱毛症は、突然発症するため驚かれる方も多いですが、『適切な治療や生活習慣の見直しによって改善しやすくなります』。再発を繰り返すこともありますが、焦らずに治療を続けることが大切です。不安なことや気になる症状があれば、遠慮なく菊川内科皮膚科クリニックにご相談ください。あなたに合った治療やサポート方法を一緒に考えていきましょう。