便秘
便秘とは
便秘とは、一般的に便が硬くなり、排便回数が週3回以下と少ない状態を指します。
また、3日以上便が出ない、あるいは毎日排便があっても残便感がある状態も便秘と考えられます。
便秘の種類
排便回数減少型:
排便回数や排便量が減少して、腸に便が過剰に貯留するために腹部膨満感や腹痛などの症状を生じる。腸内での便の停滞時間が長いため硬くなり、硬便による排便困難を生じることもあります。
排便困難型:
排便時に直腸内の便を十分量かつ快適に排便出来ず、排便困難や不完全排便による残便感を生じます。
機能性便秘
- 1. 食事性便秘: 食物繊維の摂取不足が原因で発生します。
- 2. 直腸性(習慣性)便秘: 排便刺激を無視し続けることで、直腸の感受性が低下して起こります。
- 3. 弛緩性便秘: 大腸の運動や緊張が低下し、便の通過が遅延することで発生します。
- 4. 痙攣性便秘: 副交感神経の過緊張により、腸管が痙攣性に収縮して便の移送が妨げられます。
器質性便秘
機能性便秘が便秘の大部分を占めており、
器質性便秘は腸に腫瘍や潰瘍、炎症、癒着、閉塞など通過障害があって起こる便秘です。
便秘の原因
便秘の原因には様々なものがあります
- 1. 腸管が詰まる:腸管が詰まる原因として、大腸ポリープ、大腸癌、糞詰まり、腸管捻転、手術後などによる腸管癒着、腸管外からの圧迫(腫瘍、腹水など)、クローン病、痔核などが挙げられます。
- 2. 糖尿病:糖尿病は神経障害をきたし、腸管の蠕動運動へ影響を与えます。
- 3. 感染症:腹部の感染症によって、腸管の動きが麻痺する事があります。
- 4. 腸内環境の悪化: 悪玉菌の増加により腸の動きが鈍くなります。
- 5. ホルモンの影響: 女性の生理前や妊娠中は黄体ホルモンの影響で便秘になりやすくなります。甲状腺ホルモンも腸管の動きに影響を与えます。
- 6. 便意のがまん: 繰り返すと直腸の反応が鈍くなったり、便中の水分が吸収され固くなってしまう事で、自然な便意が起こりにくくなり、出しづらくなります。
- 7. 運動不足: 腸の動きが鈍くなり、腹筋も衰えて便を押し出す力が弱くなります。
- 8. ストレス: 自律神経の乱れにより腸の働きが抑えられます。
- 9. 食生活の乱れ: 不規則な食事や食物繊維の不足は便秘を助長します。
- 10. 水分不足: 便が硬くなり、腸内をスムーズに移動しにくくなります。
- 11. 老化:腸の働きが低下し、大便が腸にとどまる時間が長くなり、便が硬くなって出にくくなります。
排便に必要な筋肉や感覚の衰えにより便秘になることがあります。 - 12. 薬剤:抗うつ薬・抗コリン薬や、鉄・カルシウムを含むサプリメントの影響により便秘になることがあります。
便秘の症状
便秘の症状は様々です
- 何日も排便がない
- 便が溜まっている感じはあるが、いきんでも便が出ない
- 下剤を飲まないと便が出ない
- お腹が張って苦しい
- お腹の痛みがある
- 便がでてもまだ残っている感じがある(残便感がある)
- 便が硬かったり、小さなコロコロの便が出る
- 吐き気がある
- 食欲がない
検査
便秘の検査は、症状の原因を特定し、適切な治療法を見つけるために非常に重要です。以下に、便秘の検査の必要性と主な検査方法について説明します。
- 1. 潜在的な病気の早期発見
- 2. 適切な治療法の決定
- 3. 合併症のリスク軽減
主な検査方法
1. 問診
まず、症状の詳細や生活習慣について詳しくお聞きします。これにより、便秘の原因や重症度を推測し、必要な検査を判断します。
2. 腹部単純レントゲン検査
この検査では、腸内のガスや便の溜まり具合、腸閉塞の徴候などを確認します。便秘の程度や緊急性を判断するのに役立ちます。
3. 血液検査
貧血、感染、炎症の状態を調べ、便秘の原因となる可能性のある基礎疾患(例:糖尿病、甲状腺機能低下症)を確認します。
4. 超音波検査(エコー検査)
便秘の診断と治療において、超音波検査(エコー検査)は非常に有用な検査方法です。この検査の必要性について、以下のように説明させていただきます。
- エコー検査の利点
1. 安全性: 放射線被爆がなく、非侵襲的で安全に繰り返し行うことができます。
2. 簡便性: 腸管の前処置が不要で、15〜30分程度で終わる比較的短時間の検査です。
3. 多角的評価: 大腸の便貯留の分布や便性状(硬い便、軟らかい便)を評価できるだけでなく、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓なども同時に観察できます。
- エコー検査が必要な場合
1. ひどい便秘や便漏れがある場合。
2. 長期にわたる腹痛や排便困難がある場合。
3. 薬物治療の効果を客観的に評価する必要がある場合。
エコー検査は、これらの情報を総合的に評価することで、適切な治療方針(摘便、浣腸、下剤の処方など)を決定する上で重要な役割を果たします。また、この検査は便秘の状態を客観的に評価できるため、治療の経過観察にも有用です。便秘でお悩みの方は、ぜひ一度当院でエコー検査をご検討ください。この検査結果をもとに、あなたの状態に最適な治療法をご提案させていただきます。
6. 腹部CT検査
腸内の状態をより詳細に観察し、腸閉塞など緊急性の高い病気の有無を確認します。
7. 大腸内視鏡検査
大腸の内部を直接観察し、がんや炎症性腸疾患などの有無を確認します。必要に応じてポリープの切除も可能です。
内視鏡検査は、腸の異常を直接観察し、早期発見・早期治療につなげる非常に有効な方法です。
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内視鏡検査の重要性
① 潜在的な病気の早期発見
便秘の原因が単なる生活習慣の乱れではなく、大腸ポリープや大腸がんなどの重大な疾患である可能性があります。内視鏡検査では、これらの問題を早期に発見することができます。② 高い精度
内視鏡検査は、腸内を直接観察するため、非常に正確に異常を見つけることができます。必要に応じて組織の一部を採取し、より詳細な検査を行うこともできます。③ 早期治療の可能性
内視鏡検査で発見されたポリープは、その場で切除することが可能です。大腸ポリープは、大腸がんに移行する場合があり、早めに切除する事で癌化を防ぎます。これにより、将来的ながんの発生リスクを大幅に減らすことができます。④ 検査の進歩
最近の内視鏡検査は、医療技術の進歩により、より快適に受けられるようになっています。当院では最新の内視鏡を導入しており、高画質カメラや細く柔らかいスコープの使用により、患者さんの負担が軽減されています。またAI内視鏡を搭載しており、術者の肉眼のみならずAIによる病変の検出・診断が可能となっており、より見落としの少ない検査が可能です。さらに、鎮静剤を使用することで、痛みや不快感を最小限に抑えることができます。便秘が続く場合、内視鏡検査を受けることで、潜在的な問題を早期に発見し、適切な治療を開始することができます。健康維持のため、定期的な検査をお勧めします。検査に不安がある場合は、ぜひ当院の医師に相談してください。皆様の腸の健康を守るため、私たちは最善を尽くしてサポートさせていただきます。
治療の必要性
便秘の治療は、単なる不快感の解消以上に重要な意味を持ちます。なぜ、便秘治療が必要なのでしょう
1. 生活の質(QOL)の向上: 便秘は腹部膨満感、腹痛、残便感などを引き起こし、日常生活の質を著しく低下させます。これらの症状は日常活動や労働生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 精神的健康の改善: 便秘は不安や鬱症状の合併率が高いとされています。便秘を治療することで、これらの精神的問題のリスクを軽減できる可能性があります。
3. 重大な健康リスクの低減: 近年の研究では、便秘患者の生存率が非便秘者と比較して低いことが報告されています。これは便秘が単なる不快な症状ではなく、生命に関わる可能性のある状態であることを示唆しています。
4. 心血管疾患のリスク軽減: 便秘患者は心筋梗塞や脳卒中などの発症率が高いことが知られています。これは排便時の努責による急激な血圧上昇が原因と考えられています。
5. がんリスクの可能性: 便秘と大腸がんの関連を示唆する報告もあり、便秘の治療が潜在的ながんリスクの軽減につながる可能性があります。
6. 合併症の予防: 適切な治療を行わないと、症状が悪化し、切れ痔、直腸脱、腸閉塞など、より深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
便秘は単なる不快な症状ではなく、適切な治療が必要です。症状や生活の質に応じて、適切な治療をうけることが重要です。
便秘の治療法
分類 | 主な薬剤名(例) | 作用機序 | 特徴・使い分け |
---|---|---|---|
浸透圧性下剤 | 酸化マグネシウム、ラクツロース、D-ソルビトール | 腸管内に水分を引き込み、便を軟化させ排便を促進 | 第一選択薬としてよく使われる。腎機能低下には注意 |
刺激性下剤 | センノシド、ピコスルファートナトリウム | 腸管神経を刺激して蠕動運動を亢進 | 即効性はあるが連用は耐性の懸念がある |
上皮機能変容薬(Cl⁻活性化) | ルビプロストン(アミティーザ) | 小腸上皮からのCl⁻分泌を促進し、腸液分泌を増加 | 慢性便秘症・オピオイド誘発性便秘に適応あり |
上皮機能変容薬(Na⁺吸収抑制) | リナクロチド(リンゼス) | 腸管内の水分保持+蠕動促進 | 腹部膨満や便秘に有効 |
胆汁酸トランスポーター阻害薬 | エロビキシバット(グーフィス) | 胆汁酸を腸内に留め、腸運動と分泌を促進 | 食直前服用。食事と連動して効果 |
便秘改善用プロバイオティクス | ビフィズス菌製剤、ミヤBM | 腸内環境の改善により排便を促す | 他薬と併用しやすく、安全性が高い |
便秘の対処法(生活習慣)
1. 食生活の改善: 食物繊維を多く含む食品を摂取し、規則正しい食事を心がけます。
2. 水分摂取: 適切な水分補給を行い、便の硬さを調整します。
3. 運動: 適度な運動を行い、腸の動きを活発にします。
4. ストレス管理: リラックスする時間を設け、ストレスを軽減します。
5. トイレ習慣の改善: 便意を感じたらすぐにトイレに行く習慣をつけます。
6. 薬物療法: 緩下剤や腸管運動機能調整薬を使用することもあります。
便秘は生活習慣の改善で多くの場合改善しますが、長期間改善しない場合や、血便、急激な体重減少などの症状がある場合は重大な疾患が隠れている場合があり精密検査が必要です。当院へご相談ください。
栄養指導の重要性
便秘の改善に栄養指導を受け、日々の食生活を改善することの重要性をご説明いたします。
適切な食事と栄養摂取が非常に重要です。栄養指導を受けることで、以下のような利点があります。
1. 個別化された食事プラン
あなたの現在の食生活や身体状況を考慮し、最適な食事内容を提案します。これにより、効果的に便秘を改善できる可能性が高まります。
2. 適切な栄養素摂取
便秘改善に重要な栄養素(食物繊維、水分、マグネシウムなど)の適切な摂取量を指導します。特に、水溶性と不溶性の食物繊維のバランスや、過剰摂取による悪影響を避ける方法を学べます。
3. 食品選択の知識
便秘に効果的な食品や、避けるべき食品について詳しく学べます。例えば、海藻類、こんにゃく、オクラなどの水溶性食物繊維を含む食品や、ゴボウ、レンコンなどの不溶性食物繊維を含む食品の選び方を知ることができます。
4. 生活習慣の改善
食事だけでなく、水分摂取量や排便習慣など、便秘に関連する生活習慣全般についてアドバイスを受けられます。
5. 継続的なサポートにより合併症を予防
定期的な栄養指導を受けることで、食事療法の効果を確認し、必要に応じて調整することができます。適切な栄養管理により、便秘に伴う様々な合併症を予防することができます。
栄養指導を通じて、あなたの体質や生活スタイルに合わせた最適な食事プランを立てることができます。これにより、便秘の改善だけでなく、全体的な健康増進にもつながります。ぜひ、当院の栄養指導を受けて、快適な毎日を過ごしましょう。
当院では鎮静剤を使って、
ほとんど眠った状態で内視鏡検査を行っています!
見落としを防ぐAI内視鏡を導入し、経験豊富な内視鏡専門医師が、
苦痛を少なく楽な内視鏡検査を実施いたします。
今まで内視鏡検査に不安を感じられていた方、
他院で行って大腸カメラや胃カメラの検査で痛みや苦しさを感じた方も
安心して検査を受けていただけるよう、様々な取り組みを行っております。
~ 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修 ~
サブタイプ | 特徴 | 症状 |
---|---|---|
IBS-D(下痢型) | BSFSタイプ6・7の便が25%以上、タイプ1・2が25%未満 | ・頻繁な水様便や軟便が見られます。 ・急な便意を感じることが多く、トイレに間に合わないこともあります。 |
IBS-C(便秘型) | BSFSタイプ1・2の便が25%以上、タイプ6・7が25%未満 | ・便が硬く、排便回数が減少します。 ・残便感を感じることがあります。 ・コロコロとしたウサギの糞のような便が特徴です。 |
IBS-M(混合型) | タイプ1・2と6・7の両方が25%以上 | 下痢と便秘が数日から数週間単位で交互に現れます。 |
IBS-U(分類不能型) | 上記に該当しない | 下痢や便秘、普通便など様々な症状 |