血便
血便とは
血便とは、消化管からの出血が便に混ざって排出される状態であり、様々な原因が考えられます。血便の色や性状によって、出血部位や原因疾患をある程度推測することができます。
主な原因
①痔(いぼ痔・切れ痔・あな痔)
肛門周辺の出血が原因で、鮮血便やトイレットペーパーに血が付く症状が特徴で、日本人の約3人に1人が経験する一般的な疾患です。
痔には大きく分けて3種類あり、肛門の周りの血管が集まっている部分(肛門クッション)がうっ血し、こぶ状になったものをいぼ痔(痔核)、肛門の皮膚が切れた状態を切れ痔(裂肛)、肛門の奥にある肛門腺という部分に細菌が入り込み、膿がたまってトンネル状の管(瘻管)ができた状態をあな痔(痔瘻)といいます。
②感染性腸炎
O-157やサルモネラ菌、腸管出血性大腸菌、カンピロバクターなどが原因で起こります。血便を伴う症例が多いです(腸管出血性大腸菌腸炎は50%以上)。
③大腸ポリープ
大腸内に生じた腫瘍が排便時に損傷し、鮮血便を引き起こします。がん化リスクがあるため早期除去が必要です。
④大腸がん
血便が唯一の症状となる場合も。日本では女性の死因第1位、男性第2位の疾患。早期発見には大腸内視鏡検査が必須です。
⑤潰瘍性大腸炎・クローン病
免疫系の以上による大腸の炎症が原因で、粘血便や血液混じり下痢を伴います。症状は長期間に及ぶ場合が多く、10代や20代の若年から発症しやすい病気です。
⑥虚血性腸炎
大腸の血流障害により出血が生じます。動脈硬化が進展しやすい高齢者や便秘の多い人に多い病気です。比較的急な発症で、下痢を伴う場合も多いです。
⑦大腸憩室出血
大腸の袋状突出部から出血する疾患。高齢者で頻度が高くなっています。突然発症する場合が多いです。
⑧粘膜脱症候群
腸や肛門周囲の粘膜が慢性的な便排出時のいきみによって脱出し、その結果として粘膜の炎症、びらん、潰瘍、出血などを引き起こす疾患群です
⑨小腸病変
頻度は少ないですが、小腸から出血する場合があります。小腸血管奇形、小腸静脈瘤、小腸腫瘍、クローン病、感染症、小腸潰瘍、遺伝性疾患などが原因として挙げられます。
⑩薬剤性消化管粘膜障害
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、低用量アスピリン、副腎皮質ホルモン(ステロイド)、抗菌薬、抗がん剤などは消化管粘膜障害をきたし、血便の原因となります。
※「痔だろう」と自己判断せず、早期に検査を受けることが大切です。大腸がんは初期段階で症状がなく、血便が唯一のサインになる場合もあります。
便の種類と特徴
①鮮血便
・出血部位が肛門や直腸に近い可能性が高く、痔、裂肛、直腸ポリープ、直腸がん、感染性腸炎などが考えられます。
・排便後にトイレットペーパーに鮮やかな血が付くなど、赤い血が目立ちます。
②粘血便
・ベタベタした暗い赤色の血液が便に混ざっている状態です。
・出血部位がもう少し奥の大腸である可能性があり、大腸ポリープ、大腸がん、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎などが考えられます。
③タール便
・黒くて粘り気のある便で、コールタールのような見た目の便です。
・出血部位が胃や十二指腸などの上部消化管である可能性が高く、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどが考えられます。
症状
血便にともなう症状と考えられる疾患
①腹痛 、吐き気や下痢
・感染性腸炎
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
・虚血性大腸炎
・大腸憩室炎
・大腸がん
②便秘や下痢
・感染性腸炎
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
・虚血性大腸炎
・過敏性腸症候群(IBS)
・大腸がん
③体重減少 、貧血症状(めまい・ふらつき・動機など)
・大腸がん
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
・消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)
・大腸憩室出血
・痔、裂肛
④残便感
・直腸がん
・直腸ポリープ
・痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
・直腸瘤
受診すべき症状
- 便に血液が混ざる
- 黒いタール便が出る
- 排便後拭いた紙に血液付着
- 腹痛・下痢・便秘の繰り返し
- 便が細かったり、粘液混じり
検査
問診と視診・触診
①問診
血便の色や量、性状、腹痛や便通異常などの随伴症状、既往歴、服薬歴などを詳しく確認します。
②視診・触診
肛門周囲の状態を観察し、痔核や裂肛の有無、腹部の腫瘤や圧痛などを確認します。直腸指診では、直腸内の状態を触診で確認します。
便検査
①便潜血検査
・目に見えない微量の血液が便に混じっていないかを調べます。
・大腸がん検診などでも用いられる一般的な検査です。
②便培養検査
細菌やウイルスなどの感染性腸炎の原因となる病原体の有無を調べます。
血液検査
①血液検査
出血による貧血の程度を調べます。
②炎症反応検査
炎症性腸疾患や感染性腸炎などの炎症の程度を調べます。
③腫瘍マーカー検査
大腸がんなどの腫瘍の存在を示唆する物質の有無を調べます。
内視鏡検査
①大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
・肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を観察します。
・ポリープや腫瘍の発見、組織採取(生検)、手術が可能です。
②S状結腸内視鏡検査
大腸カメラより短い範囲の観察になります。
③胃内視鏡検査(胃カメラ)
黒色便(タール便)など、上部消化管からの出血が疑われる場合に行います。
④小腸内視鏡検査
胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査でも明らかな出血源が特定されず、その後も出血を繰り返す場合に行う場合があります。
⑤カプセル内視鏡検査
小腸内視鏡検査と同じく、胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査でも明らかな出血原が特定されず、その後も出血を繰り返す場合に行う場合があります。
画像検査
①腹部CT検査
大腸がんや炎症性腸疾患などの病変の有無や広がりを調べます。
②腹部超音波検査(エコー検査)
腹部の臓器の状態を観察し、腫瘍や炎症の有無を調べます。
③血管造影
胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査でも明らかな出血源が特定されず、造営CTで小腸の出血が疑われる場合。
止血治療も可能なため、緊急時に行われます。
治療
血便の治療法は、原因となる疾患によって大きく異なります。以下に、代表的な疾患とその治療法について説明します。
サブタイプ | 特徴 | 症状 |
---|---|---|
IBS-D(下痢型) | BSFSタイプ6・7の便が25%以上、タイプ1・2が25%未満 | ・頻繁な水様便や軟便が見られます。 ・急な便意を感じることが多く、トイレに間に合わないこともあります。 |
IBS-C(便秘型) | BSFSタイプ1・2の便が25%以上、タイプ6・7が25%未満 | ・便が硬く、排便回数が減少します。 ・残便感を感じることがあります。 ・コロコロとしたウサギの糞のような便が特徴です。 |
IBS-M(混合型) | タイプ1・2と6・7の両方が25%以上 | 下痢と便秘が数日から数週間単位で交互に現れます。 |
IBS-U(分類不能型) | 上記に該当しない | 下痢や便秘、普通便など様々な症状 |
痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)
①保存療法
軟膏や坐薬などの薬物療法
排便コントロール(便秘や下痢の改善)
生活習慣の改善(温坐浴、刺激物の回避など)
②手術療法
保存療法で改善しない場合や、症状が重い場合に行われます。
痔核結紮術、痔核切除術、裂肛切除術などがあります。
大腸ポリープ、早期大腸がん
①内視鏡的切除術
大腸内視鏡検査中にポリープや早期がんを切除します。ほとんどの場合、この治療で完治します。
進行大腸がん
①外科手術
がんの進行度に応じて、腸の一部または全部を切除します。
②化学療法(抗がん剤治療)
手術後の再発予防や、進行がんの進行抑制のために行われます。
③放射線療法
直腸がんなどで、手術前にがんを小さくしたり、手術後の再発予防のために行われることがあります。
■炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
①薬物療法
ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを用いて、炎症を抑えます。
②食事療法
症状に合わせて、消化の良い食事や栄養バランスの取れた食事を摂ります。
③手術療法
薬物療法で改善しない場合や、合併症が起きた場合に行われます。
感染性腸炎
①薬物療法
細菌性腸炎の場合は、抗生物質が使用されることがあります。
下痢止めや整腸剤などで、症状を緩和します。
②輸液療法
脱水症状がひどい場合は、点滴で水分や電解質を補給します。
消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)
①薬物療法
胃酸分泌抑制薬や粘膜保護薬などを用いて、潰瘍の治癒を促します。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染が認められる場合は、除菌治療を行います。
②内視鏡的止血術
出血が多い場合は内視鏡で止血を行います。
大腸憩室出血
①内視鏡的止血術
出血部位を内視鏡で確認し、止血処置を行います。
②血管造影
内視鏡で止血できない場合は血管造影で止血を行います。
③手術
大量出血や、止血困難な場合は手術を行う場合があります。
小腸出血
①IVR(Interventional Radiology)
出血動脈にカテーテルを挿入し、塞栓物質で止血します。
薬剤性消化管粘膜障害
まず疑われる原因薬剤を中止します。その後出血の程度により、絶食、点滴治療や内視鏡精査を行います。
予防
日常生活での注意事項
□食事管理
刺激物の回避:スパイス・アルコール・カフェイン・脂っこい食事を控え、腸内環境を整えるようにしましょう。
食物繊維と水分:野菜・果物で食物繊維を摂取し、便通を良くしましょう。
調理法:生ものは加熱調理し、乳製品は乳糖不耐症の場合避けましょう。
□生活習慣改善
規則正しい生活:就寝・起床時間を固定し、便通を我慢しないようにしましょう。
適度な運動:消化促進とストレス軽減のため、無理のない運動を継続しましょう。
ストレス管理:仕事・人間関係のバランスを取り、睡眠不足を避けましょう
□健康管理
定期検診:大腸内視鏡検査で憩室・がんを早期発見
早期受診:血便が持続する場合や体重減少・便の細さがある場合は消化器内科受診
□刺激物の回避
・脂質・アルコール・カフェイン:脂っこい食事や揚げ物は消化管に負担をかけるため控え、アルコールやカフェインも刺激を避けましょう。
・生ものの調理:野菜は加熱調理し、生食は腸内環境を乱す可能性があるため避けましょう。
□食物繊維のバランス
・水溶性食物繊維:オートミールやキノコなど腸内環境を整える食材を摂取しましょう。
・不溶性食物繊維の調整:便秘予防には有効だが過剰摂取は逆効果のため、野菜は150g/日、果物は50g/日を目安に。
□水分補給と栄養管理
・こまめな水分摂取:便通を良くするため1日1.5L以上を目標に。
・乳製品の活用:ヨーグルトや乳酸菌飲料で腸内環境を整えましょう。
日常生活での注意事項
□食事管理
刺激物の回避:スパイス・アルコール・カフェイン・脂っこい食事を控え、腸内環境を整えるようにしましょう。
食物繊維と水分:野菜・果物で食物繊維を摂取し、便通を良くしましょう。
調理法:生ものは加熱調理し、乳製品は乳糖不耐症の場合避けましょう。
□生活習慣改善
規則正しい生活:就寝・起床時間を固定し、便通を我慢しないようにしましょう。
適度な運動:消化促進とストレス軽減のため、無理のない運動を継続しましょう。
ストレス管理:仕事・人間関係のバランスを取り、睡眠不足を避けましょう
□健康管理
定期検診:大腸内視鏡検査で憩室・がんを早期発見
早期受診:血便が持続する場合や体重減少・便の細さがある場合は消化器内科受診
□刺激物の回避
・脂質・アルコール・カフェイン:脂っこい食事や揚げ物は消化管に負担をかけるため控え、アルコールやカフェインも刺激を避けましょう。
・生ものの調理:野菜は加熱調理し、生食は腸内環境を乱す可能性があるため避けましょう。
□食物繊維のバランス
・水溶性食物繊維:オートミールやキノコなど腸内環境を整える食材を摂取しましょう。
・不溶性食物繊維の調整:便秘予防には有効だが過剰摂取は逆効果のため、野菜は150g/日、果物は50g/日を目安に。
□水分補給と栄養管理
・こまめな水分摂取:便通を良くするため1日1.5L以上を目標に。
・乳製品の活用:ヨーグルトや乳酸菌飲料で腸内環境を整えましょう。
血便発生時の対応
直後の対応:数時間は食事・運動を控え、症状観察。なるべく安静を保ちましょう。
日記付け:飲食・便の状態、排便回数を記録し、医師とのコミュニケーションを活用
緊急性の判断と受診の目安
救急外来が必要なケース:大量出血・激しい腹痛・発熱を伴う場合は、直ちに救急外来を受診しましょう。
消化器内科/肛門科受診:通常の症状(少量出血・軽度の腹痛)では消化器内科や肛門科を受診しましょう。
血便が止まった後も:原因を特定するため、必ず受診が必要しましょう。
血便が止まった場合の対応ポイント
□医療機関受診の必要性
血便が一時的に止まったとしても、悪性疾患(大腸がんなど)の可能性を否定できません。特に50歳以上・体重減少・便の細さなどのリスク要因がある場合は、必ず内視鏡検査を受ける必要があります。
□自宅での対応
・安静を保ち無理な運動やストレスを避けます。
・消化に良い食事を心がけ刺激物を控えます。
・再発時は直ちに受診
最後に
血便は放置せずに、早期発見・早期治療が大切です。気になる症状があれば、お早めに消化器内科を受診してください。
血便の原因を知るためには内視鏡検査が有効です。定期的な検査をして健康に過ごしましょう。
当院では鎮静剤を使って、
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~ 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修 ~